神が細部に宿る 

星占い器

 ご無沙汰しています。突然、顔を除く全身が原因不明の皮膚炎になってしまいましたが、それも落ち着きました。直ってきました。


 母校の公開講座に通うことになりました。ここに来るのは卒業以来のこと。それで、学生時代に友人とよく利用していたお店でランチ。


 口ひげ生やした、脱サラのさわやかペンションオーナー的風貌だったマスターが、全く年を取ってない様子で愕然。使いこまれた山小屋風の内装も時が止まったかのようにそのまま。メニューのラインナップも値段もそのまま。


 そしてテーブルの横にはワンコイン星占い器。当時、既に懐かしのアイテムだったのに、未だ現役らしい。


 友人たちは誰一人気がついていなかったのだが、実はこのお店の本棚の隅の隅の目立たないところに、北朝鮮雑誌があった。グラビア中心のアサヒグラフのような体裁の月刊誌。中身は日本語で…つまりはステキな『地上の楽園』のナウ!=プロパガンダ的なこと。


 友人たちが気が付かないのも無理なからぬことで、メニューはドリアやらBLTサンドとか、アメリカ風のポテトどっさり、パテのサイズがビッグなハンバーガーとか、当時としてはハイカラなもので、更にはスキーツアーメンバーを募集してるような、こ洒落たフレンドリーなお店。本棚の中心にはワインやイタリア料理の専門書とスキー雑誌なんかが鎮座しているような具合。


 今でこそかの国のニュースは日常的になったけれど、あのころは殆ど情報なんてなかったですよ、若者にはピンとこないかもしれないですが。タブーとでもいうか。


 それで政治的関心…ではなく、もの珍しさ、好奇心で2〜3ヶ月に一回くらい、一人でこっそりやってきて奥の席でこれを読んでおりました。向こう3年分くらいは読み続けていたはずなのだけれども、この雑誌の一番の思い出は、結局、主体(チュチェ)思想なるものが、具体的にはどんなロジックなるものなのか、雑誌の文面からは全く分からず仕舞いだったこと。初めてチュチェという言葉を知り、毎月毎号、正の字がいくつ書けるだろうと思うぐらい、繰り返されていたのだけれど。


 今回もこの雑誌を楽しみにしていたが、なかった。代わりに見つけてしまったのは、なぜか聖教新聞


 よくよく見ると募集しているツアーメンバーもスキーから、よりハードなトライアスロンに。空白の期間に何があったのやら。