美しき押し花の世界 杉野宣雄展 / そごう美術館

 あまり興味はなかったのだけれど、若冲展はタダで入れたし、花の平面構成の勉強になるかなという程度で入場。それが想像以上の緻密な世界で驚く。侮りがたし押し花の世界。キャベツ外葉の葉脈を生かして夏富士とか、りんごの丸く剥いた皮で夕日に照らされた雲のたなびく様とか。そう、押し花というのだけれど、花よりも葉っぱや、穂の部分とか、花でないものので作られた作品の方が断然面白い。

 と、持ち上げておいて矛盾しているのだが、どーも通して見ると、何かが物足りない。ものすごく高い技術で配色にもセンスがあると思うのだけれど、単なる飾り物感は拭えないというか、決して公の美術館の所蔵品にはならないだろうなとか。公の美術館がエライというものでもないんだけど、うーむ、境があることは分かるのだが、じゃ、具体的にどのヘンがとなると分からない。

 葉っぱ主体の作品のポストカードを買いたかったが、ポストカードはおろか図録にも私がいいなと思った作品はなかった。お花中心のメルヘンなものばかり。日本ヴォーグ社が全面的にバックについている関係もあって、おばちゃんの手芸の世界をにらんでいるからか。ご本人もいらっしゃったが、ニット界の貴公子のようなナヨ系。演出の臭いがプンプンする。もったいない、実にもったいない。もっとすごーい世界に広がる可能性があるのに。余計なお世話だけど。