300%スパニッシュ・デザイン、ファッションとスペインの文化/埼玉県立近代美術館

ゴルチエ・ミロ


 これも10日に終了して久しいのだけれど、大変よかったのでメモ。(書いているのは20日

 愛知万博のスペイン館との連動企画らしいこの展示。場所は埼玉近美が提供しているけれど、企画その他はスペインの方々が何から何までやっておられる様子。

 スパニッシュデザインは、19世紀末〜現代に至るまでのアーティスティックなポスターと、照明器具、イスを中心にしたデザイン展。先にこちらを見る流れでして、ああ、ステキ、個性的なデザインだなぁと思っておりましたが。

 ファッションとスペインの文化コーナーがかなりの衝撃度でした。元々、服飾展の企画自体がとても珍しいので、かなり期待をしていましたが、期待以上。

 パリやミラノをはじめとしたコレクション会場のランウェイを行きかった、トップメゾンばかりの本物のオートクチュール作品105点を20cmもの間近で見られるなんて、感激。

 ほとんどの作品はガラス越しではなく、手や頭のないマネキンに着せられた状態でたたずむのみなので、本当に近づけます。縫い目まで見えます。ヒラヒラの山吹色のチュールレース*1を幾重にも縫い合わせた作品は、縫い目の向きが案外、バラバラでした。そういうところをチェックするドレスではないのですが。ははは。

 そうそう。

 スペインの文化、絵画、写真、フラメンコ等の民族衣装等がアイディアの源泉となったオートクチュール作品を、元ネタと並べて陳列する…というアイディアがいいのです。元ネタは絵画の場合、全てが本物というわけではなく、複製画であるケースもあるけれど、この際、一向に構わない。どういったモチーフが、現代のドレスのデザインにどういう形で生きているのか…ということが理解できさえすれば充分。ベラスケスのラス・メニーナスgoogle:image:ラス・メニーナス)にあるような、当時の極端に横に張り出したスカートのシルエットが、カール・ラガーフェルドのシャネルのイブニングドレス(91年秋冬コレクション)のシルエットと一致するところとか。

 それともう1つ、スゴイ!と思ったことは。展示の方法。

 ドレスと元ネタである絵画や、元ネタを写した写真部分にのみスポットライトが当たっているのみで、会場全体はほぼ真っ暗で、壁も黒く塗りつぶされて。実際に、右上の画像(ジャン・ポール・ゴルチエの「イブニングドレス・ミロ」という2003年の作品)とほぼ同じ見え方です。闇の中にドレスだけがドラマチックに浮かび上がる感じ。作品タイトルや解説は、入り口で渡されたペンライトを使って見てくださいという徹底ぶり。ゴージャスなドレスだけでなく、会場演出自体からも非日常な雰囲気を満喫。それにしても、色鮮やかで個性的で迫力満点のスペイン風ドレスは、背景色として黒が似合うこと。

 このファッションの方のキュレーターはスペインのファッションカメラマンだとか。カメラマンが企画というのも意外だけれど、だからこそ服の魅せ方が分かっているのか。

 ところで。

 この埼玉という地の利のない会場にしては、結構な人手。その上、ファッション展の方のカタログが完売ですと!期間終了前に完売なんて珍しい。

 大体、美術展のカタログは2500円くらいが相場だと思うのですが、このファッション展のカタログは4800円。かなり高いのです。しかも、文章はスペイン語オンリーという不親切さ。なのに完売とは。

 このカタログは、解説なんざどうでもいい!ただただ美しいドレスと、美しい元ネタを堪能できさえすれば満足、というシロモノなのでしょう。確かに見本をめくってみた限り、写真がキレイなこと…あ、そういやカメラマンがキュレーター。

 私も展示を見ている時に、心の中で「カタログ買うぞ!」と鼻息荒く意気込んでおりました。ええ、とても残念でした。

サイト:http://www.saitama-j.or.jp/~momas/003kikaku/k2005/k2005.07/k2005.07.htm

 

*1:それにしても、コレクション作品というのは、チュールレースを多用するものらしいと新たな発見。ひと目見てそれと分かるものだけでなく、ボリュームを出すためにテレビでの映像では見えない箇所にも使用していたり…とか。もっと高級な素材を使ってるのかなとも思ってたりしてたのだけれど。