沈黙の声/東京国立近代美術館

 写真美術館や現代美術館ではなく、近代美術館でもアート系映像作品を所蔵しているとは知らなかった。(映画はここの管轄みたいだけど)
 キムスージャ(韓国)の「針の女」。長い長い黒髪を後ろで一つに束ねただけの、小柄な地味な服装の女性(作者自身)の立っている後姿が延々と映し出されるのみ。場所はメキシコシティ、カイロ、ラゴス、ロンドンそれぞれの雑踏の中。
 無関心にただ行きかう無数の人々。流れに身を任せない、ただそれだけなのに、暴力的な人の多さに不安な気分になる。時には好奇のまなざしに晒されることもある。けれど、ずっと微動だにしない姿をただ見つめ続けていると、すがすがしさを覚える不思議。