HANGA 東西交流の波/東京芸術大学大学美術館

 鎖国をしてても、意外なところで外国との繋がりが分かるものなのだなという面白い企画展。神聖ローマ帝国のマクシミリアン1世に仕えた画家デューラー*1のカバ(当時のヨーロッパでは日本の麒麟と同じく想像上の動物に等しい)が280年後の日本の版画(世界地図)の隅っこに記されていたり。
 浮世絵富嶽三十六景の鮮やかな青は、中国経由で手に入れたプルシャンブルー(プロイセンの青)という顔料によるものとか。中国の版画を通して西洋画法の遠近法も日本の版画(浮世絵)は取り入れてきた。
 その広重や歌麿の浮世絵が、ゴッホを始めとしたヨーロッパの絵画に影響を与え、さらにゴッホが使ったというプレス機を日本の長谷川潔(私の好きな版画家)が譲り受け、作品に使っていた。
 その葛飾北斎富嶽三十六景 神奈川沖浪裏(大きな大きな津波が逆巻くその向こうに、小さく富士山が見える。誰でも一度はどこかで見ているはず。)の展示。ただし、私が行ったときは作品保護ということで、既にレプリカに差し替え状態。
 やはり、あまりの波の描写のインパクトの強さで、色々なヨーロッパの芸術家に影響を与えたらしい。カミーユ・クローデルとか。
 「TUNAMI」という語が英語にもあったのは、この浮世絵から来ていると最近、何かのコラムで知った。そして今「TUNAMI」で、大変なことになっている地域では「TUNAMI」と名づけられた赤ちゃんもいるとニュースで聞く。これも交流の波、か。

*1:同時開催で「2004年度コレクション展 ドイツ・ネーデルラントの近世版画 ―マクシミリアン1世の時代を中心に― 」を別室でやっておりました。デューラーの作品も当然、ありました。相変わらず粘着質な線マニアぶり。肉眼で追うのも苦痛なくらい、細かい線でいっぱい。宗教的な絵であってもその主題より、線マニアぶりにいつも唖然としてしまいます。このおじさん、何考えてんだろうと(笑)。おかげで同時代の他の作家とは全く違う次元の作品になってしまっているように思えてしょうがない。