鈴木 豊写真展「ガウディ 時空の神話」/コニカミノルタプラザ

旅先で感動した光景をカメラにおさめてみるものの、プリントを見るといつも何かが違うと思ってしまう。写真はありのままを写しているはずなのだけれど。
その何かとは、うまく言葉では言い表せないのだけれど、強いて言えば「空気感」「空間感」。
その写りきらない何かを写す一つの答えがこの展示かなと。
眼の視野=網膜上の大視野と意識を集中し認識されている中視野に相当する画角を6列6行の35ミリフィルム1本に収めるという特殊な撮影手法。つまり、6列6行総計36コマによって一枚の作品、風景を作っています。最初の1コマから36コマ目まで、所要時間は2分。そのぐらいのスピードで取り切らないと、光の色が変わってしまったりで“一瞬”の風景にはならないのだとか。
こんな写真です。
画像は小さいので分かりにくいですが、展示サイズはかなり大きく、その大きいサイズで見ると迫力があります。歪んでいるから、像は正確ではないのですが、でもこの歪んだ写真の方が空気感、空間感がよく出ているような。
実は、私も昔、スペインでこの空気感を残せないものかと、一つの風景を複数のカットで再構成すればいいのかなトライしたことがありまして。ただし、コンパクトカメラ×三脚なしの手持ち撮影という、ローテク&いい加減なもので、つなぎ目が汚すぎ。全くバカでした…。
個人的には、サグラダ・ファミリアグエル公園といった戸外の建築よりも、室内の撮影作品の方が好きです。生き物に飲み込まれるような、クラクラと眩暈がするような、一種独特のガウディっぽさがより出ている感じ。
中でも、ある私邸のリビングで、中央に女主人が座っている作品が一番よかった。住んでいる人が一緒だと、家はよりいっそう生き生きするんだなと。隣に女主人なしの全く同じカットがあったけれど、やっぱり何かが違う。
久々にいい意味で「何だコレは!」と感動した写真展でした。
ちなみに画像右の部屋は、作者の方の説明によると、撮影当時は、ある保険会社の会議室として使われていた部屋だそうです。今は、一般公開されており、観光客でも入れるのだとか。