エルミタージュ美術館展/江戸東京博物館

高校生の時に友人が貸してくれた漫画『女帝エカテリーナ』。作家は池田理代子。よって、かなりドラマチックに脚色されてる疑いが濃厚で、実際はどうだか分かりませんが、読み終わった直後、田舎のアホ女子高校生にこぶしを握り締めさせて
「私も天下、取ったる!」
と一瞬、マジで思わせるだけの迫力はありました。
プロイセンの田舎貴族出身で、美貌を持ち合わせないことをしっかり自覚している少女ゾフィー。けれども「支配されるよりも支配する側になるのよ!」と野心に忠実に、自身で磨き上げた知性と勇気だけを頼りにロシアの次期皇位継承者の妻の座をゲット。その後、ダメ夫をクーデターで倒して女王に成り上がり、国を栄えさせ、好きな美術品を収集しまくりつつ、愛人もイケメンばかり合計12人、生涯途切れることなくはべらせて。しかも、飽きたらポイじゃなくて、男女関係が終わった後も、面倒を見ながら友好関係は保ちつつ*1。かっこよすぎ。女子にオススメです。ただし、自由に生きる女には大きな代償がつきまとうという法則は生きてますが。
このように、勝手ながらもエカテリーナ2世に思い入れがあるので、この企画展はかなり期待していたのですが…思ったほどではありませんでした。tATu.じゃないけどロシア人プロモーターに騙されちゃったのか江戸博物館。(>それは言いすぎ。)
多分、“黄金の馬車”を空輸するだけで大変な費用がかかってしまったのではないかと邪推です。でも、この馬車はすばらしい。乗ってみたい。
それと宝飾品関係。自国内でサファイア等貴石が取れていたというのは勉強になりました。でも、女官職が付けたEⅡマークを模ったブローチにまで数百個のダイヤモンドがちりばめられているってのは…女官の宮廷内の地位の高さだけでなく、やっぱスゴい勢いがあったんでしょうな、エカテリーナ2世時代は。宝石の花束という作品も目がハート型になってしまう。欲しい。
タイトルはエルミタージュ美術展ではなく、エカテリーナ2世のお宝展だったらよかったかも。それとも、見たきゃサンクトペテルブルグまで来いっていうロシア戦略なのか。
ところで。
とても地味なのですが、ちょっと個人的に興味深い展示がありまして。
会場に入ってすぐにかけてあった、1712年2月のピョートル1世の結婚の祝宴を細かく描いた銅版画。フォークがどう見ても熊手のような2本歯なのです。
ピョートル1世は、結婚前に諸国漫遊して情報収集し、帰国後は自らファッションリーダーとなって西欧化を推し進めた人。食事用フォークは、フランス・イタリアでは3本に既になってるころだと思うのですが、何処の国から取り入れたのか?それともロシア式?ファッションはかなり西欧化が進んでるようにみえます。髭もじゃ顔の貴族はいないし。
一方、2本歯フォークに料理を突き刺したまま頭上に振りあげている、今時感覚からするとお行儀の悪い貴族はいても、手づかみ状態の人は描かれていない。たまたま描いていないだけなのか?
ナイフもフォークもテーブルや皿の上、あちこちに放って置かれて、今時の感覚からするとワイルドなのですが、元々、当時の食事作法ってロシア・フランス問わずこんな感じだったのか。色々と妄想が広がって興味深い絵なのでした。

*1:政治的に有能な男達だったからということが大きいとは思うけど。