向後兼一展「within 10 km of mine 」/ art&river bank

 art&river bankとはまさに多摩川の堤防沿いにあるギャラリー。家からママチャリサイクリングで行ける場所にある。
 向後さんの展示から、なぜか以前、四ツ谷のニエプスという写真ギャラリーで観た斉藤圭太さんの「numb」という展示と共通するものを感じた。気になったので斉藤さんの時と同じように色々質問をしてみた。そこで分かったこと。
向後さんは20代半ばの男子。たまプラーザに住んでいて、日吉にある写真学校に通っていた。斉藤さんも20代半ばの男子、下丸子に住んでいて、田園都市線にある写真学校に通っていた。同じような環境にいる同世代の男子は、そろって自分の生活エリアの中の風景を被写体にしている。
 ただし、向後さんは工事現場と病院限定とし、画像を重ねたり、一部をぼかしたり、カットしたり、歪めたりしたデジタル処理をしたものを提示し、斉藤さんはあるがままの郊外住宅地の風景をオーソドックスな手焼きプリントで提示している。よって、見た目は全く違うものだ。だから「共通するものを感じた」というのは、同じものを見せられているということではない。
 のっぺり感、無菌な無害な感じ、空虚さ、それを否定的ではなく、かといって積極的に肯定するわけでもなく、当たり前のあるがままとしている屈託のなさとでも言ったらいいのだろうか。そんな感じが両方の展示からあふれているように感じて、これがこの世代共通の、自分の世界の捉え方なのだろうかと思ったり、思わなかったりで日が暮れた一日。