ミッドナイト・ムービー

ミッドナイト・ムービー [DVD]

ミッドナイト・ムービー [DVD]

 『エル・トポ』について語るアレハンドロ・ホドロフスキー、『イレイザーヘッド』について語るデヴィッド・リンチを期待して借りたのだけれど、う〜む。特に新たな発見!という感じはなかった。他の監督も作品の強烈さのワリに比較的、まともというかオトナしめの印象。


 面白かったのは興行する側のインタビュー。特にエルジン劇場の人は、一映画館の興行主というより、画廊とか美術ギャラリーのギャラリスト的態度、つまり新しい何かを発掘して、長い年月をかけてでも育る(人々がその新しさについて来られる日まで、支え続けるとでもいうか)視点を持ってる人のようであった。他にも、自分のとこの映画館の立地から、ターゲットは大学生で、何十万人いて…と、極めてマーケティング的発想に基づいてるんだなぁとか。70年代の日本の映画関係者でこういうタイプの人ってどのくらいいたのかしらん。活動屋だもの。


 とにかく、こういったイカレたムービーをマリファナがんがん決めながら、夜中に大勢で見るなんて、すんごい時代だったなぁ〜〜ってことですね。映画館の中のお薬パワーで増大した妙な一体感を妄想します。同時上映にわざわざマリファナの与える悪い影響についての教育映画(アニメっぽいので本来は子ども向き?)を持ってくるってのも、すごいユーモア。客に受けまくりだったそうで。


 でも、最後の『イレイザー・ヘッド』は、薬を使って見られるような内容ではなく、大勢で楽しむというより、一人で孤独に見る客ばかりだった、という話は、確かに他の映画とは全く質的に違うことがよく分かるエピソードだなと。


 『ピンク・フラミンゴ』のジョン・ウォーターズ監督は初めて見たのだけれど、この人、お話は至極知的でまっとうなのだけれど、まっとうなことを話している姿を見れば見るほど、怪しさがにじむ、そんな不思議な感じの人。「99%の下劣さに、1%の尊厳」いい言葉だと思いました。