ウィーン美術アカデミー名品展/損保ジャパン東郷青児美術館

 期待していたようなのは最初の部屋だけで、後はもう、消化試合みたいな展示、というのが個人的な感想。何を期待して行くか、でしょうが、私の場合、ええもう、クラナッハクラナッハクラナッハクラナッハですよ。(ホントに小品5点4点だけだったなぁ)白い陶器のようなお肌に性格悪そうな、あるいは幸薄そうな顔、これですね。


 そういや、昔、本家本元の美術アカデミー絵画館(芸大併設の展示館といった趣のこじんまりしたところ。)にボスの「最後の審判」という大層イカレたエログロSFチックな祭壇画、これ見るために足を運んだことがあります。大変、素晴らしかったです。くらくらしそうでした。


 で、プラスアルファ、意外とルーベンスとかクラナッハもあるんだー、客も少ないし、そういう意味ではお得かも、と思うようなところだったなぁと。あと、廊下とかに学生の展示とかもあって、ウィーンの今の若者はこういうのやってんだ、とか。私が覗いたときは、ちょうど写真の展示でした。順路ではなく、勝手に教室方面に侵入しちゃったんですが。


 後は妄想タイム。


 ルーベンスの「三美神」。ルーベンスは工房持ってたので有名な人ですが、今回、具体的に解説に「(三美神が掲げている)花かごと後景、それぞれ専門の担当が描き、云々」などと書かれていたので、つい、これは現代日本でなら、さいとう・プロダクションの仕事かと。


 「ゴルゴ13」って今、デューク東郷と依頼人とターゲットの顔だけがさいとう・たかをで、それ以外はすべてアシスタントが描いてるんじゃないかと思ってるんですけど…。年季の入ったアシスタントはちゃんと独立させてるのかな。ルーベンス工房出身者の作品の展示を見て、更に余計な妄想。

 
 マース「アドニスの装いの少年の肖像」。ほっぺの丸さとつぶらな瞳がかわいらしい小さな男の子が描かれているわけですが、これもまた現代日本でならコスプレ写真かと。金持ち市民の子どもで「ロリカ」なる昔のローマの防護服を着て、小さな弓矢を持ち、犬をはべらせ。


 これって街中にある衣装の充実した「子ども写真館」で撮らせたものと同じじゃないかな、とか。さしずめ赤い腹巻をし、まさかり担いだ金太郎スタイルとか。もちろんクマさんも一緒で。300年経てばアートになるのか…?


 マイテンス「女帝マリアテレジアの肖像」。大きなダイヤをふんだんにあしらった髪飾り・胸飾りが目を引く。遠目にみると本当に硬質で透明な輝きがあるかのよう。


 でも、当たり前なんだけど近くに寄って見てみれば、ただの白と黒との絵の具のボテボテとした塊。それがある距離から、ふっと硬質な輝きを持った物体に見える。視覚って騙されやすいというか面白いというか。