フィリップス・コレクション展/森アーツセンターギャラリー

 “アートの教科書”という副題。これは日本人の好きな印象派の有名どころの作家*1が一通り展示されてるからでしょうか。

 どっちかというと、アメリカのお金持ちの趣味のいいコレクションと言った風情。健全で、居心地のいい、明るめトーンの、調和のとれた色彩の作品が多かったような。アートは時に、人間のダークな部分とかも突きつけられたり、考えさせられたりするものだけれど。あくまで来日コレクションの展示なので、残った分にはそういうものもあるのかもしれない。

 全体的に、子どもでも誰でも安心して見られる展示だなぁという印象。夏休み企画。

 そんな中で、ドーミエの4作品(三人の弁護士、蜂起、力持ち、イーゼルに向かう画家)は、ダークなオーラを発していて異彩を放っておりました。ちょっと他の展示作品とテイストが違う。特に、弁護士の高慢でいやらしそうな顔といったら。

 ゴッホも2点。療養所で描いた「道路工夫」は、「もっと落ち着いた色で描いてみよう」と、彼自身、再出発するイメージで取り組んだ作品と解説が。確かに原色の黄色は使ってはおらず、一見すると灰色がかった黄土色で落ち着いて見えますが、そのべた塗りの黄土色でさえ怖いですよ。街路樹がうねって歪んでますよ。ええ、電波が、電波が漏れてます。やばいです。怖いです。

 隣の「アルルの公園の入り口」は、比較すると電波放出量が少ないんですよね、やっぱり。

 ゴーギャンと言えば、タヒチのウッソウというかネットリとした密林とか、褐色の肌の生命力の強そうな女性の絵というイメージを勝手に持っておりましたが、静物画もあるんですね。「ハム」という絵を見て、反射的に「(骨付きだし、身がしまってそうで)美味しそう」と思ってしまいました。不覚。どこ見てんだか。

*1:作品自体が有名な、ポスターにも使われているルノワールの「舟遊びの昼食」ぐらいだけど。