点滴猫、その後

 昨年夏、点滴を打つことでかろうじて命をながらえた実家の老猫が、いよいよ危なくなってきたらしい。

 おしっこを家の中のあちこち構わず、気ままにするようになってしまった。先月までは、がんばってトイレまで行こうとはしていたが、遂にあきらめたということか。

 大体2〜3時間おきに彼女を抱えてトイレに座らせてやるというのが、実家の両親のこのところの日課らしい。夜中も含めて24時間体制。猫のおしっこは大変くさいうえに、一旦付いてしまった臭いは中々取れないので。

 また、姿が見えないと思っていたら、玄関の下駄箱とタタキの隙間に隠れていたり、事務所(実家は自営業を営んでおり、自宅とつながっております。)の机の下にいたり。

 普通の猫なら別になんということもないのでしょうが、この猫に関してはもう、タダゴトではないのです。

 昔から極端に人見知りな性格でして、家の中ならどこにいても玄関からの音をキャッチして、来客があろうものなら脱兎のごとく(猫なんですが)逃げ出して隠れてしまう。家人以外の人間が怖いのか、逃走先でもブルブル震えている始末。そんなだから、猫を飼っているといっても、家族以外はその姿を見たことのない人ばかり…。

 なので、知らない人が出入りする玄関や事務所は、彼女にとっては鬼門中の鬼門。決して自らは近づかなかったし、抱っこして連れていこうとするだけで、狂ったように暴れていたのですが。

 そんな場所に行けるようになったなんて、人間風に言うならばボケてしまったということになるのでしょうか。人間換算年齢約100歳。