ヴォルフガング・ティルマンス展/東京オペラシティアートギャラリー

 雑誌等でおなじみの、つまり既視の写真が沢山あった。でも、初めて見るものとあわせ、大小バラバラの(本当にサイズがマチマチ!)250点もの作品を一気に観ることで初めて、なるほどなぁと強く実感できたことがある。
 テンションが、何を撮っていてもほぼ同じであること。平熱のままというか。
 展示方法のせいかもしれない。だだっ広い真っ白な空間に、展示位置も上から下まで。額装されていないものがほとんどで、ピンやテープで印画紙を留めているだけなので、宙に浮いているかのごとく。
 それでもやはり、一つ一つを撮る時の心構えが同じであるんだぁと。そして、キチンとした生活をしている人なんだなと思う。整理整頓がしっかりしてるとか、生真面目とか、そういうんじゃないんですが。自身で作りあげた秩序の中での暮らしというか。で、この展示法だと彼の穏やかな暮らしぶりに見てる側まで包み込まれるような気がする。
 同じ日常、という視点でしきりと頭に浮かんでいたのは、内原恭彦氏の写真。でも、アウトプットは全く違う。不協和音漂う色の洪水。キレイでないものたち。見てる側を落ち着かなくさせる雰囲気。
 私にとってティルマンスのは、多少羨望の混じったヨーロピアンな日常。内原恭彦のは、日本(アジア)の都市周辺のリアルをぐぐっと突きつけてくれる感じ。改めてキャノン写真新世紀での個展「うて、うて、考えるな」は、よかったです。忘れないようにメモ。