美しき日本の絵はがき展/逓信総合博物館

 プチ絵はがきコレクター*1としては、大満足な展示でした。
 日本人ってどうしてこう小さな、制約のあるモノに多大な労力を注げるんでしょうかね。
 透かしが入っていて光を通して見ると、深照灯を出す哨戒中の戦艦とか、看護婦さんの下に負傷したロシア兵が浮かび上がる日露戦争時代の絵はがき。今となっては名だたる日本画家たちが、お金稼ぎに書いていた作品なども、かなり贅沢。
 風刺の効いた絵はがきも結構ある。洋風の警官の制服を着させられる仁王様とか、閻魔様が刑法講義をするの図とか、文明開化に直面する仏教界のキャラクターシリーズ。
 でも、とにかくデザイン、イラストとしてキレイ。昔の人は無名の人も含めて、なんていい絵を描いていたんだろうと。小林かいち、という作家が特に気に入りました。アールデコっぽい、幻想的な雰囲気。
 
 ああ、ステキ、ステキ、ステキ…。

 うーむ。

 さすがエスティ・ローダー現会長、創業者のご長男のコレクションです。趣味が大変よろしい。彼がボストン美術館に寄贈した25,000枚のうち、厳選された約350点が今回の展示品。
 荒俣宏が、著書のどれかに書いていた日本女性のヌード写真絵はがきは1枚も入っておりませんでした。明治時代、もっぱら外人向け、おみやげ、輸出用として相当人気があったというか、流出してたそうです。もしかして残りの24,650枚の中にはあるのかもしれませんし、元々、個人の趣味で集められたコレクションなので、ないのかもしれません。
 そんな中、『郭の12時』という吉原の遊女の24時間を2時間毎に描いたセットものがありました。絵の中に英語でシーン毎の説明が印刷されているので、これもまた外国人向けの絵はがきだったのでしょう。デザインの素晴らしい作品です。
 とはいえ文明開化と同時にエキゾティシズムという名の下に外人に消費されて(させられて)、外貨稼ぎに使われて…というのは、なんとも言えないものがありますが、事実として。
 
 サイト:http://www.teipark.jp/event.html(スクロールすると、この企画展の案内があります。)

*1:と言っても、価値あるものではなく、自分が気に入るかどうかだけを基準に、気まぐれに買ってるだけ。