失楽園 風景表現の近代 1870-1945/横浜美術館

眼のある風景(昭和13)

 金曜日は夜8時までやっているので、夕方5時過ぎにフラリと入ったところ、来場者は本当にまばら。
 コーナーごとに制服を着て座ってる職員の方々の生あたたかい監視下の元、あちこちの長椅子に腰掛けては、そのたびに1〜5分間くらいうとうとと寝てしまったり。静かで人気もなく、実に気持ちいい。
 寝てしまったのは、別に展示が退屈ということではなくて、私が疲れ気味だったに過ぎなくて。
 目玉となる超有名作品はないです。でも、天井の高い美術館で、ゆったりと見られるのは気分のいいものです。上野あたりの美術館だと、平日でも結構な人手で、仕方なく人の頭の間から覗き込むなんてこともありますから。
 この2年間くらい苦行のように、美術館通いをしているのですが、あちこちで何度も出くわす作品というのがあります。靉光『眼のある風景』です。(画像)
 国立近代美術館の所蔵品。よって去年はその常設展示コーナーで必ず。今年は上野でも見ましたし、今日は横浜でもお目にかかった次第。何回この眼とガンの飛ばしあいをしたでしょう。学芸員好みの作品なんでしょうか。
 また、横浜美術館はがんばって個性的な企画展をやる反面、所蔵品を使いまわしてる感もあって、やはり毎度、何度も見るなぁと思う作品が幾つかあるのです。
 けれども、それが不満だというのではないのです。
 何度も出くわす、と思えるということは、記憶に残るような作品でもあるわけです。(有名・無名は関係なく)何か気になる部分があるということでもあり、何度も見てると親しみもわいてくるのです。
 だから、そんな作品の前に立つと
「ハロー。また会ったね、キミ」
と声をかける。心の中で。口に出したらアブナイ人になってしまう。

 常設展示室の「日本画における幻想的な風景」コーナーが、どれもよかった。
 特に伊藤彬の墨と木炭で描いた「イメージの中の山水」は、度肝を抜かれました。イタリア旅行中に目にした歴史的建造物の古いしみが着想源になった…そうですが、形の定まらない闇がうねっているような感じがしました。

サイト:http://www.yma.city.yokohama.jp/look/collection.html