生誕百年 安井仲治 写真のすべて/松濤美術館 

 ものすごく期待が大きすぎたのかもしれない。思っていたのとはちょっと違っていた。本で見た、ユダヤ人を撮った写真がとても気になっていた作家でした。
 以下は、写真のことなんて全く分かってない素人の感想として。
 昔の写真は当時としてはすごい技術が要ったようなものでも、今ならパソコンで誰でも出来てしまうんじゃないかなと思うものも多い。だから、この方がもし今を生きていたら、今の技術を使ってもっと精度の高いものを作っているだろうなと思いながら鑑賞するというのも、なんだか複雑な気持ち。そのくらい、チャレンジ精神のある人だなというのは分かるし、共感もするのですが。
 また、風景や人物は明らかにかつての日本のモノなのに、今は何処にもないだろうなと思うようなものばかり。外人が見るような感覚で、かつての日本のレトロな風景、サーカスの女の人、漁師等々を見てしまった。
 こういうのは、今は決して撮れないんじゃないかと思う。こんなカラダや顔立ちをした人はいなくなった。みんなソコソコ満ち足りて、栄養もいきわたったし、オシャレになったし、幸せになったし、豊かになった。でも、骨太な表情を持った人はいなくなった。今は、薄くて軽ろやか。それはある意味デジカメや、インクジェットプリンタの持つ質感や色合いに合っているなと常々思っている。
 「すべて」じゃなくて、何かに絞って展示がされていたら、また違った感想を持てたかもしれない。残念。
 ポスターに使われている蝶の写真はよかった。オブジェやイメージを撮ったものは、時代に関係なく力強い。