ぼっけえ、きょうてえ

ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)
一気読み。他にも3篇あるのですが、共通して感じたのは、志麻子姐さんは男性に徹底的に幻滅しているというか、深い絶望があるのだなということでした。
とにかく出てくる男がことごとく、相当にひどい・ずるいヤツばかりでして。
女たちも、決して善人とはいえないので、同じだと言えるのかもしれませんが、彼女達が歪むのは、貧困とひどい・ずるい男たちによってですから。その上、最終的に一番ひどい目に合うのは、女性という話ばかり。
一見、ひどくなさそうな男も、やはり同じ。自覚がないところが性質が悪いですよ。最初の旦那さん、あなた多分、なんでこんな目にあうか、分かってない。遊女の不幸話を無責任に聞きたがるから、そういう目に合うんですよ〜。人の不幸を消費したり、人を搾取することはヒドイことなのですよ。
というわけで、ホラーは、男と女の間の暗くて深い溝にあるということで。そこから得体の知れないものが這いずり出てくる。
ちなみに本の表紙絵の甲斐庄楠音『横櫛』。同じ人の同じタイトルの別の絵の実物を間近で見たことがあります。別の絵といっても、モデルの遊女と着物の柄、背景となる衝立の模様が違うぐらいで、ポーズや全体の構図は全く同じ。
ぼぉぅっと白く浮かびあがるその顔は、写実的でありながら、この世の人間とは思えないぞっとする美しさがありました。あの世とこの世の境に立っている人、幽霊のようでもありました。