くじらのこと
id:kmiuraさん経由で知ったこのコラム 捕鯨と差別:
http://www.gofield.com/openair/ryu/archives/000511.html
を読んで思い出したこと。
1993年、京都でIWC総会が開かれていたとき。たまたま私は友人と旅行中で、スウェーデンにいた。ホテルの部屋でテレビをつけると朝から晩まで、ニュースはIWC総会の動向と日本の捕鯨について流していた。
日本の捕鯨。荒れた海に小さな船が行く。鋭いモリを使って刺し、まだ生きている鯨*1の頭をハンマーのようなもので大勢で容赦なく殴りつける。海と船の甲板はどす黒い血であっという間に染め上がる。
金髪のレポーターが、船の甲板の後方で(つまり、漁師たちからは見えない位置で)波しぶきを浴びながら何かを訴えている。何を言っているのかは分からない。けれども、表情が動作が叫んでいる。
「なんと野蛮な、恥ずべき行為でしょう!皆さん!」
同じ映像が毎日毎日、期間中、TVニュースに繰り返し流される。
そして、何度も見ているうちに気がつく。映像と映像の隙間にチラリとのぞく、くじら漁師の姿に。彼らはリラックスしている。そして時に微笑んでレポーターにこっちへ来い、あっちを見たらどうだといった指示をしている。
どうやら、漁師は普通の取材だと思っているように私には見えた。どんな目的を持った取材なのか知らされていないのだろうか。日本語を全く知らない人が見れば、あの映像の編集の仕方では、日本人はヘラヘラ笑いながら、鯨をなぶり殺しにする民族だ。
それから間もなく日本に戻った後、比較的社会問題に関心がありそうな知人を何人か選んで聞いてみた。京都で鯨のことは何かやってたなぁとは思うけれど、それ以上のことは覚えていない。それが共通した答えだった。
私もあの時、日本にいたら何の関心もないまま、今もいることだろう。でも、一度外に出てあのグロさを強調したニュース映像(しかも、総会会期中、何度も繰り返す執拗さ)を見て、日本がどういう風に見られているのかを知って驚いた。そして、それが日本国内では全く知らされていない、このギャップにも。
…というのが当時の印象でした。なにしろ10年以上も前の話なので、細部は覚えていません。ですが、何の予備知識もなく、突然、悪意のナイフを突きつけられたようなその衝撃は鮮烈に覚えています。まだ若かったし(笑)。同じ素材でもNHKなんかでやる鯨漁ドキュメンタリーとは、別物です。
もちろん鯨に限らず、鳥も豚も牛も全ての屠殺の現場は、グロくて生々しいものだとは思うのですが、ことさら強調されているように見えたのも事実。
私自身は出来れば時々は食べたい派。ベーコンは子供のころ、自宅でよく食べました。昔は、その地域でベーコンと言えば鯨でした。豚を知ったのは、鯨が捕れなくなってから。竜田揚げも懐かしい。
*1:種類までは分からないのだが、比較的小型の鯨だった。