食べることには興味がない

 id:sujakuさん経由
 hizzzさんの「ネタのタネ http://d.hatena.ne.jp/hizzz/20040726」での19世紀「家政学」の誕生から現在に至る消費までの分析が、とても面白いと思いました。その中の

身もフタもない言い方をすれば、慈善と平等と自我意欲に燃えた家政学は、家事合理化のハテの家事労働の消滅=TVディナー&個食に結実する。家庭から「労働」を追放して、さてナニがのこったのだろうか。労働を商品として消費するユートピア、答えは「余暇」である。

という部分について、具体的にはこんな感じではないかと、ずるずると思い出したことがあります。(最近、暑さでボーっとしているせいか、いろんなことを思い出す。取りとめがないのが難点だが。)
 以下の引用は 『<食DRIVE>調査がとらえた現実』という長いレポートの一部です。食DRIVE調査の調査対象者は1960年以降に生まれた主婦。同一の対象者に対し、まず食や生活に関わる意識調査を行い、次に1週間、日々の全ての食べ物・飲み物の記録(写真)と行動日記をつけてもらい、最後に意識調査と実際の記録の両面を合わせて分析するという3ステップから成っております。

 今の主婦がよく口にする「時間がない」「余裕がない」「忙しい」「疲れていた」という言葉の本当の意味は、そう単純ではない。そういう理由で食事を簡単にしている主婦の話を集めると、次のような実態が浮かび上がってくる。
 「遅くなると作る時間が短くなるので、煮物などはできない」という主婦の遅くなる理由は、調査対象期間の1週間を見る限り、友達とお茶することと子どものおけいこ事の送迎。そのために週の大半の食事が簡単なものになってしまう。「今週は忙しくて食事の支度に時間がかけられなかった」という主婦(38歳)の多忙の理由は、週3回午前中にしていたテニス。「仕事で疲れて夕飯を作るのが面倒になった」と夕食をラーメン屋で食べることにした主婦(28歳)の「仕事」は、午後4時に終わる在宅アルバイト。「子どもを幼稚園に出す準備で忙しく、朝は目玉焼きとサラダを作る余裕もなかった」とアンケートに答えている主婦(31歳)の起床時刻は6時50分で、食事をするのは7時。こうした例が次々と示されている。

 これだけの引用ではわかり難いかもしれませんが、要は、一日のやるべきことの中で、やりたくないこと、できれば削りたいことは「食事を作る(食材の調達・後片付けまで含む)時間」だということと、その理由としての「忙しさ」等々の質が、随分変わってきているということです。ありがちな「女性の高学歴化」「女性の社会進出」「夜型生活が進んだから」などと言ったオジさまが好きそうなキーワードでは括り切れないということでもあります。
 また、

 「飽食の時代」といわれているが、「食費はできるだけ節約したい」と語る主婦が増えており、「食費はやりくり次第なので、節約してお金は他のことに使いたい」という声が一般的になってきた。30代前半では、8、9割の主婦がそう答える。
(中略)
 (節約の方法とは)野菜や肉、魚などの生鮮素材をなるべく買わないようにしているのが第一で、節約のためにコンビニおにぎりや菓子パン、カップ麺などの購入を控えるという話はほとんど聞かない。素材をストックしてそれらに手をかけて工夫する「節約」ではなく、1回ずつの食事を安く簡単に済ませる「節約」だ。

 と、節約の概念も変化しているようです。特に夫も子供も食べたがらない野菜・魚は、買うだけ無駄だったりしますし。
 他には、食事のお菓子化というのもあるようです。食べたいものや手軽に取れるものを選ぶ傾向の中、食事の1部(特に朝)を甘いパン、ケーキなどで済ますようになってくる家庭も珍しくはなくなっているということです。
 この新しい家政学、合理化にイチャモンをつけたいというわけではないのです。 
 実は私自身、似たような調査の仕事に関わっていたことがありまして、そこからも、お友達とゆっくり半日おしゃべりしたり、近所の公園に行ったり、携帯でメールのやり取りをしたり、ゲームをしたり、お稽古事をしたり、テニスをしたり、外食したり、ディズニーランドに行ったり、毎日、夫と晩酌をしていたりと皆さん、お金をそれほどかけずとも、上手に「余暇」を楽しんでいる様子がうかがえます。
 ただ、冒頭ページにもあるように

「食べることに興味がないので」と平気で語る主婦も多い。

と、食べることなんかどうでもいいという気分が背景にあるのが、気になっておりまして。
「食べること」とは、回りまわって結局のところ「生きること」「生きる力」につながることではなかろうかと思うと、なんだか寂しい気がしてくるようなしないような。
それとも、これが日本風スローライフ(ゆとりある生活)ということになるのでしょうか。むむむ。
 私自身は、食べることには執着してる方だと思います。ええ。夫とも料理の多い少ないで争ってますし(笑)。
 
 なお『<食DRIVE>調査がとらえた現実』はこの本の一部をまとめたものです。
 『変わる家族 変わる食卓―真実に破壊されるマーケティング常識』
 変わる家族 変わる食卓―真実に破壊されるマーケティング常識
 本自体は、人から借りて一度ぱーっと読んで「どこも似たようなことしてるなー」と思ったきりなので、内容は聞かないでくださいまし。