アダプテーション
かなりブラックなコメディ…と私は思った。でも、それはヒネた見方なんだとは自覚あり。
ラストで、ニコラス・ケイジ扮する主人公「チャーリー・カウフマン」は、希望に向かって車を走らす。この状況はハッピーエンド以外の何モノでもないのだけれど、ふと、ハッピーエンドにいたるまでの、あまりに複雑に入り組んだ虚々実々さを思い起こすと、ものすごい皮肉にも思えて。納得できる脚本を書けるようになるまでに、色んな実在の人とそうでない人、両方を巻き込んで、その人たちをことごとく駄目にしてる。でも、それ自体が脳内というか、フィクションという仕組み…なんだけど、エンドクレジットまで使って曖昧にする徹底ぶり。合意の下で関係者を食いモノにしているとでもいうか、それすら脚本家のセルフパロディ、自虐ネタなのかとか。
じゃ、チャーリー・カウフマン脚本の映画*1がキライかというとそうでもなくて、突き詰めていけば得体の知れない摩訶不思議な生き物、それが人間、と時に振り返ることができていいかなと思ったり。甘くて口当たりのいいモノを見たい時は、他に沢山あるし。
主人公の前半の徹底した自問自答ぶりは、妙に共感。それと、蘭ドロボー男と作家の会話で、一つの物事をトコトンまで突き詰めて、自分の中で「これは充分満足いけるところまでいけた」と思った時、キッパリと止めて新たなものでトコトンまで行こうとするか、止めた後も後を引いてしまうものなのか。もちろん、両方アリだと思うが、私は前者の方により共感。
*1:他に見たことがあるのは『マルコヴィッチの穴』『ヒューマンネイチュア』