ジャズピアニスト松永貴志 18歳・卒業ツアー/ Bunkamuraシアターコクーン

 ジャズ好きな夫が格安チケットを入手したとのことで、ついていくことに。松永クンはこの春、高校を卒業したばかり。けれどもブルーノートから2枚目のアルバムを最年少(17歳)で出し全米デビューも果たしている実力派らしい。確かに、ジャズのことはさっぱり分からない私でも、最初の曲が始まった次の瞬間「すごいな、この低音(左手)の力強さは」と思った。
 テクニックが、音色が、作曲のセンスがどうとか、そういうことは結局、私にはよく分からないのだけれど、彼はすごい大物かもしれない、と思った。それは、独特のMCのテンションだ。
 大きなよく通る声で、実に堂々とした話しっぷりなのだが…意味、または意図不明なんである。
(ええっと、今、みんなを和ませようとジョークを飛ばしてるつもりな〜の〜か〜な〜???)(…これは、自分の作曲した曲の解説をしてるんだと思うけど、いつ弾いた曲?あ、次のアルバム?え?違う話?)
 客席からは時折、失笑が漏れていたので、困惑していたのは私だけではないと思う。でも、彼が大物だと思うのは、そんな客席の雰囲気を理解した上でなお、無邪気な声で「イェーッ!」と気勢を上げ、「じゃ、次の曲いきます」と、サッサと椅子に座り、ものすごい集中力で何事もなかったかのように弾き始めることと、その後も、客の顔色を伺ったり萎縮することなく独特のテンションのマイペースMCで、通してしまえることだ。
 休憩時間の女子トイレの中では「しゃべりを聞きたいわけじゃないのにっ!」「まぁまぁ、まだ若いんだから」という声も聞かれたが私は、彼は真の天才/天然と見た。こういう人は、周りの雑音を気にせず、好きなようにやってドシドシ才能を開花させればよろしい。既にほぼ独学でここまで成功しているわけだし、「パンフレットに演目は書けない。なぜならば、僕は開演の5分前にならないとその日演奏する曲を決められないから。昨日作った曲を発表するかもしれないし」などと、パンフレットに書けるなんて、スゴイではないか。
 ちなみに「報道ステーション」のテーマ曲は、彼の作曲だそう。要チェキ!