散歩する惑星 

 なんというか、久々にエンドロールを見ながら「なんじゃこりゃぁ!」と思った作品。かなり困惑。人には手放しではお勧めできないのだけれど、面白いとは思う。とりあえず私は。眠りそうなほど意味不明な展開の合間に、心に残るシーンがちりばめられているから。

 皆が同じ方向に向かって走ろうとするから起こるひどい渋滞。何が訴えたいのか分からないが奇妙なパフォーマンスをするデモ行進。安く手に入れてより高く売る経済中心で、神様さえも例外でない。子供をいけにえにする立派な大人たち。死者が蘇って、生者に何かを語りかける。誰もが逃げ出したいと思っているらしい世界。

 白塗りの顔で、やたら太っていたり、やせぎすだったりヘンな登場人物ばかり。ここは現実の世界のようであり、誰かの終わらない悪夢の中のようでもある。唯一の救いは、人々の愚痴をあまりにその身に受けてしまったが故、心を壊してしまった詩人でタクシー運転手だった兄を抱きしめながら弟が「もうすぐ兄さんのような人の時代がくると思う」と静かに語るところか。その言葉すらあと少しで破滅がせまっているらしいこの世界で、救いになるのかどうかも分からない。
 ところで、この映画はローテクな撮影方法による奇妙な効果がウリになっているようなのだが、そういう技術的な面ばかりを紹介するのはどうかと思う。監督が伝えたかったのは、技術じゃないわけで。配給会社も、もうちょっと違う打ち出し方を考えた方が…なんて。でも、売るためには仕方がないのか。経済中心だなぁ。