オーストラリアの現代写真展 世界は歪んでいる/東京都写真美術館

世界は歪んでいる…よりも、英語のサブタイトル、Supernatural artificialの方がしっくりくるように感じるなぁと。超自然。自然の延長線上の不自然。人工。ストレートなスナップ写真ではなく、どれも何らかの作りこみがある。デジタル加工も、当たり前の世界。
オーストラリアといえば。
コアラ、カンガルー、エアーズロックアボリジニ、クロコダイルダンディ、オージービーフ。私には、こんなイメージなのですが*1、そういったありがちなイメージに頼る作品はなく。
言い換えれば、現代アメリカ写真展、イギリス写真展、フランス写真展…西欧諸国のどの国にも置き換え可能なくらい、よく言えば普遍的、悪く言えば特徴を感じることはできませんでした。カンガルーが出ていたり、アボリジニの精霊をイメージしたような作品があっても、だからといってオーストラリア的何かを主張しているわけではなく。
だからツマラナイ、と思ったかと言うとそうでもなくて。どこの土地に住んでいることよりも、どんな環境・文化の下で暮らしているか、そのことの方が影響が大きいんだなと思った次第。

ところで。
アン・ザハルカという人の「自然の驚異」と言う作品シリーズの展示方法が、よく見るとちょっと変わっておりまして。
大きく引き伸ばしてプリントした写真(白ふちあり)を壁にそのまま、粘着ゴムかなにかで密着させて貼っている。それだけならまだ普通なのだけれど「自然の驚異」コーナーの全体の照明を暗く落として、作品にだけかなり強めのライトをピンポイントに、しかも、作品サイズにちょうどぴったりの四角形の形になるように照らしている。
 だから、プリントでありながら壁面のスクリーンに投影したものを見ているような、または壁に埋め込まれた液晶モニターを見ているようにも見える。でも、印画紙は、どんなにフラットに貼り付けようとしても微妙にデコボコになる。そのデコボコが反射して光るので、やっぱり違うと分かるのだけれど。
作品自体があらわしている自然・人工の不思議なバランスの風景と、このデジタルをイメージするアナクロな展示方法。不思議な組み合わせ。

サイト:http://www.syabi.com/schedule/details/australia.html 29日(日)まで。

*1:それにしても貧しい発想だなぁ、私。