明恵 夢を生きる

明恵 夢を生きる

明恵 夢を生きる

 年末に女友達の家に行って、相当の長居をした。


 彼女の今年、というか去年は「夢」を追求することだったという話を聞く。毎日見る自分の夢を克明に書きつけながら、その意味を考えているのだと。


 鎌倉時代のお坊さんで19歳から60歳で亡くなるまで毎日毎日、夢を書き綴っては自己分析をしていた明恵という人をずいぶん前に知って以来、いつかはやりたいと考えていたことだったという。 


 夢は全て、目を覚ました直後に和製カリグラフィーとも言える彼女独特のペン字で巻物状の和紙に一気にしたためられており、それ自体が何かもうアート作品の様相。その巻物の山の中から、私が登場した夢も探し出して見せてくれた。


 そんなことがあって明恵というお坊さんのことが頭に引っかかっていたのだが、引越し先の図書館の入ってすぐの書架からぱっと目についたのがこの本。ああ、これも何かの因果律かと借りた。


 仏教、特に華厳経の予備知識ゼロなので、信仰と密接に結びついた明恵の見た夢そのもの、本自体の内容は半分も理解できてないんじゃないかと思う。河合先生による明恵の綴った「夢記」の解説&分析部分頼み。それでも彼女の「夢を綴りたい」という気持ちは分かったような気がした。


 それと個人的に面白かったのは、男性であるところの明恵が成熟する、修行を極めるにあたって、最終関門だったと言えそうな自身の内面にある女性性との向き合い方、葛藤の克服。


 もちろん河合先生の分析というフィルターを通してのことで彼自身の本当のことは分からないのだけれど、正面から女性性に向き合う男の人の内面ってこんなメカニズムなのか、と純粋に目から鱗。新鮮。