三歩歩いたら忘却の彼方

アフガンスリッパソックス

 画像は、「アフガンスリッパソックス」なる商品名にて、NGOやフェアトレードショップで販売されているアフガン難民女性お手製の実に温かいルームシューズである。4年前に青い方を自由が丘のピープル・ツリーで購入した。

 底がスエードになってるところがフローリングの床の上を歩いていても寒さが伝わってこないポイントか。ただのスリッパだと脱げてしまったりするが、これは限りなく毛糸で編んだショートブーツに近く、足首まで包み込んでくれるのもいい(ヒザ下ぐらいまでの丈のあるロングタイプもあるらしい)。冷え症のひどい人なら、普通のソックスと二重履きにできるぐらいのゆとりもある。冬に大変ありがたい、実用品としていい商品だと思っている。

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 定期循環しているサイトで「あふがにすタン」という書籍化された4こま漫画があることを知る。いつも貴重な情報に感謝。主人公「あふがにすタン」は、お目目パッチリの小さな少女。でもほとんどセリフもなく(言葉をしゃべらず)、ただただ「ぱきすタン」をはじめとする諸外国に翻弄され続ける無力なキャラ。一応、アフガン問題をおさらいできる体裁(かなり砕きまくった内容ではあるが)で、「アフガニスタンが忘れ去られないように」というのが意図だという…らしい。

 あのような無力キャラに国を擬人化して描くこと自体、国辱だという発想はないのかというのが正直な私の感想だった。いや、「オースティンパワーズ」よろしく、差別・偏見ネタで全てを罵倒しつくすような自覚のある腹の据わった矮小化なら、ありかもしれないが…と考えをめぐらす私の方がよっぽど悪魔か?

 とにかく、自身に潜む悪意に全く気がつかないまま「忘れ去られないように」という無邪気さに嫌な感じを拭えない。そして読者は「あふがにすタン、かわいい」と思うことだろう。彼女が無力であることこそが「かわいい」と思わしめる源なのだが、その残酷さにチクリと胸を痛める人は、どのくらいいるのだろうか。無力を無垢と捉えて、その実、無能と言っているのと同じなのに。そしてなぜ、少女キャラなのか…。これは言い出すと長いので、今回はやめておきますが。

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 …それでふと、このアフガンスリッパソックスは今、どうなっているのかと検索してみたところ、どこのサイトでも売り切れ状態。これは人気があって品薄ということではなく、アフガン難民キャンプで活動するNGOへの国連機関からの助成金が大幅減少し…要はこのプロジェクトが現地で維持できなくなって、商品の入荷ができなくなったということのよう。*1


 かくしてアフガニスタンは忘れ去られていくのか。漫画で記憶にとどめた読者は、どうしているか。


 かく言う私自身も、すっかり忘れてしまっていて、これがきっかけでスリッパソックスの今を確認している状態。三歩歩いたら忘れる鳥頭。

*1:ソースは一応こちら。http://www.rakuten.co.jp/sedie/508222/542205/