新学期、いい話

 長い間、登校拒否というか引きこもりをしていた小学生の男の子が
「ボク、学校に行く」
と、登校をしたという。知り合いのMさんの息子さんの同級生だ。

 Mさんのご家庭と、この不登校の男の子の家は、同じマンションに住んでいる縁もあって、不登校であってもずっと家族ぐるみのお付き合いをしていた。

 この6月、Mさんはこの夏休み期間を息子とともに、アメリカに赴任中の夫と一緒に過ごすことを話した。すると
「あの子にも一応、アメリカに来ないって誘ってもらえない?」
と男の子のお母さん。

 以前から何かイベントの折には誘いの声をかけてもらえないかと、そのお母さんから頼まれていて、Mさんも心よく引き受けていた。仲良しのMさんの息子が一緒なら、外に出る気になるかもしれないと。ただ、男の子がその誘いにのったことは、それまで一度もなかった。

 だからMさんも、そして当のお母さん自身も、今回も彼は話にのってこないだろうと思っていた。

 ところが
「ボクも行きたい」
と即答をしたのだ。Mさんも、男の子のお母さんもビックリ!

 実はこのアメリカ行きの話を切り出したのは、この男の子が物心ついたころから、ほとんど会話のない仮面夫婦のご両親が、正式に離婚に踏み切ることを彼に告げた直後だったらしい。両親が別れることがはっきりしたことで、彼の心中に変化が生じたのだろうか。*1

 他人のお子さんを1ヶ月預かる、いかも不案内な海外で!責任は取れるのか!とMさんの夫は当初、猛反対をされたそうです。(極めて良心的な反対意見であると思います。)

 でも、Mさんは
「あの子の人生が変わるかもしれない大きなチャンスなんだから!」
説き伏せて、息子たちと一緒に連れていきました。

 そして、久々の登校。

 もちろん、学校に行くことだけが全てでもないし、遅れを取り戻したりで嫌な目にあうかもしれないし、これで全てハッピーエンドなワケじゃない。

 でも、心からよかったね、と思える久々の出来事。男の子が自分の暗い殻から外へ、小さな一歩を踏み出した。それが例え、どんなに小さな一歩であっても。

 そしてMさん、本当にお疲れ様でした。1ヶ月間、あちこち子ども達を連れまわして(連れまわされて?)燃え尽きたそうです。

*1:複雑な事情が他にもあって、もちろんそれは男の子自身の問題ではないのだけれど、結果として彼に2重3重に暗い影響を与えていたであろうことは、他人にも推測できる内容。本当に気の毒な話だとMさんから聞いて思いました。