光の詩人 福原信三・信辰・信義写真展/ハウスオブシセイドウ

福原信三

 資生堂の創業者の息子たちの大正〜昭和にかけて撮った写真の数々。ビジネスマン兼、アーティストのお家柄なんでしょうか。しかもお金持ち。でも日本の写真史に多大なる貢献を果たした方々であるようで。また、彼らの趣味(というにはあまりにハイクオリティ)が、資生堂の事業(例えば資生堂パーラーのしつらえとか)に、反映しているというのも面白かった。

 信三は、風景写真ばかり。日本でも、パリでも、中国でも、朦朧としたトーンで徹底している。信辰(路草)は、塀とか木とか、直線、幾何学的な面白さ。そして、信義はボタニカルアートの感覚に近い、精緻な花の写真。
 いずれの写真も、ものすごく静か。音のない、または一瞬だけ訪れた無音の世界を切り取った感じ。そして、日本画のよう。奥行きが圧縮気味というか、余白の美があるというか。

 スナップショットで今を切り取ったり、デジタル技術を駆使した今までにない表現方法もいいけれど、こういう古典的な美を追求したような作品を見ると、とても心洗われる気がする。

 評論家は、新しいものがよきもの、過去にやりつくされた表現など無意味、と言うのだけれど、目新しいものでもくだらないものを見させられるより、分かりやすい美を見ている方が、普通の鑑賞者の立場としてはよっぽどかいいと思うのですが。