山寺 後藤美術館所蔵 ヨーロッパ絵画名作展‐宮廷絵画からバルビゾン派へ‐/うらわ美術館

 コロー、ミレー、ルソーにクールベ。有名どころの、有名でない作品を数多く取り揃えた企画展。あ、でもこれ悪い意味ではないのです。実際に見に行ったのは、先週ですが。

 バルビゾン派と呼ばれる一連の作品。フランス革命以降に発生した、当時としてはよくある田舎の風景を描いたものなのでしょう。正直、これまで興味がありませんでした。

 ですが、今回、有名・無名の枠に捕らわれず、とにかく沢山まとめて見ることができたことで「“印象派”も突然、湧いて出てきたんじゃないんだなぁ」という実感が持てました。歴史のつながりとでもいうか。

 風景画を描くということは、結局のところ次第に、その場面の光とか空気をどう表現するか、に集中していくのだろうか。

 牛の背中に当たっている太陽の光の色と、足元に生じる色濃い黒のコントラストで、暑い夏の日の昼間なんだろうな、とか、雲の白にかかる、光の反射で生じるピンク色の面の混じり具合で、夕方が近づいていることを知らせたり。高くそびえ立った木の上の方の枝や葉や、奥深い森の向こうは、光や暗闇にかすんで輪郭はハッキリは見えない。波のしぶきは一瞬で、目に形は残らないが、水は光を反射して、微妙な色合いはイメージとして残る。湖の湖面もしかり。

 こうして形のあいまいなでも色彩や絵筆のタッチは残された印象派が、ゆくゆく誕生するのだろうか、とのんびり妄想できる展示でした。人、少ないし。

 ただ残念だったのは、多くの作品が直接、ではなくガラスに覆われていたこと。ガラスの使用自体は、保全の理由があるのでしょうし構わないのですが、作品の前に立つと、鏡のように自分の姿や、対面の他の作品まで映りこんでしまっていました。ちょっと落ち着かなかったです。偏光ガラスを使うとか、何か手立てはなかったのかな。