ジェームズ・アンソール展/東京都庭園美術館

 ベルギー象徴派展内の数ある作品の中で、彼のは特に異彩を放っておりました。ゆえに、見に行くことに。


 ベルギー象徴派展でも、中心となっていたのは「二十人会」に所属していた作家たち。「二十人会」は、当時、斬新、前衛芸術を目指した人たちの集まりだったのですが、そこでも理解されなくて(前衛過ぎて)、弾き出されてしまった人なんですね。このアンソール氏。


 本当の初期の肖像画や風景画は、普通に絵の上手い人という感じ。それが北斎漫画をはじめ、日本、中国の絵の模写を経ると、彼の個性(グロテスクさ)が発揮されるのですが、その認められないルサンチマンあふれる時代が一番いいかなぁと。右上画像『仮面と死神』もそうです。


 ポスター、パンフレットは仮面や骸骨などのグロテスクなモチーフと暗いテーマなのに、妙に鮮やかな色(赤、白、緑、時に青。白の抜け具合がとてもとても。)を取り合わせた油絵ばかりですが、実際に多く展示されていたのはモノクロの素描とか、エッチング。密度の濃い線画のような感じ。


 写実的ではなく、こちらもまた人間の内面の醜さを誇張してあらわしたようなものばかりですが、なんというか、あるときは漫☆画太郎、あるときは楳図かずお、あるときは三浦建太郎(『ベルセルク』ですな)が頭にチラついて。


 死神が鎖鎌を振り回し、血まみれの死体が天井からつるされつつ、それを好奇心丸出しで覗きこむ人ありで、残酷ながらも、どこか笑えるようなところがあるからでしょうかね。人と人でないものが、何でもないよと言った感じで混在してるところとかも、なんとも漫画チック。カリカチュア