異教徒による邪道観光

 サンタ・マリア・ノッヴェラ教会だけでも見所十分ですが、時間がある人には付属のサンタ・マリア・ノッヴェラ教会美術館にも立ち寄ることをおススメ。
 美術館と言っても、今は使われていない修道院をそのまま保存しているといった風情。教会が世界の観光客でいっぱいいっぱいなのに、お隣のこの施設は、かなり長い時間いたにもかかわらず、ほぼ貸切状態なほど人気薄。
 とはいえ、ルネッサンス期の、ある意味クドい絵画に疲れた目には、それ以前に描かれた緑色を基調とした素朴な壁画(『創世記』を解説したものなど)は、かえって新鮮。
 中々、面白かったです。紙芝居みたいに分かりやすく、聖書の物語を伝えるようとしていて、東洋から来た異教徒にも理解しやすいというか。
 ですが、一番面白かったのは、壁画の部屋でちょっとだけ歌を歌ったこと。
 反響音がすばらしい…。
 とりあえず、ぱっと思いついた大好きな『魔笛』の夜の女王様のアリアの一番のサビ部分を。きれいな歌声でビックリ。とにかく“自分の声じゃないみたい”でウットリ。どんなカラオケエコーよりもすごい。
 グレゴリオ聖歌の方がよっぽどふさわしいんでしょうが、そんなのさすがに頭に入っていない。ちなみに残響時間は約7秒!
 こんな風に残響音が長く、美しく響くよう計算された部屋で、昔のキリスト教徒の皆さんは賛美歌を歌ったりして、美しいハーモニーで神との世界を共有していたんでしょうか。
 確かに、素人の私の声でもかなり美声に響くこの空間、神に仕える修道僧の声ならば、神の世界が身近に感じられるかもしれない、と東洋の異教徒にも思わせるものが。
 ただし、ここはギターにバッテンがついた標識があったので、本当は音を出したり、歌ってはいけないのではないかと思います。誰もいないときに、サビ部分だけをささっとやるぐらいで。