28日後…

28日後...特別編 [DVD]
 『トレインスポッティング』といい『ザ・ビーチ』といい、オサレなのかもしれぬが自分ことしか考えてない上、何の反省も成長もしない若者…でなくてバカ者映画で、本当にムカついた監督の映画をなぜか見てしまい。
 成長はしたみたいでした。やっと、自分以外の他者の存在を描くことができて。
 感染すると、即座に凶暴化して非感染者を襲うウィルスが蔓延したイギリス。僅かに残された非感染者(主人公も含む)が、生き残りをかけて感染者と戦う。とはいえ、感染者は感染しているというだけで、生きている人間でもある。
 生き残り兵士が言う。
「ウィルスの蔓延前も後も、世界は変わらない。戦って、殺しあって、生き残るか、死ぬか」
 別の兵士が言う。
「俺たちは、見捨てられたんだ。こんな島国、どうなったって外の連中には関係ないんだ。空には飛行機だって飛んでいるのに」
 たまたま、平和な国で暮らして、遠くの国で悲惨な出来事が起こっていることも知っていた。けれども、無関心だった。それが今、我が身に降りかかってきた、ということ。それでも人は他者を信じられないと、生きていけないんだなということ。
 ラストの呼びかけが「HELP」ではなく「HELLO」というのに唸らされました。
 …と、それはいいんだけれど、まだなんか、こう「自分の現実にだけ優しくて、他人のそれには冷たい」って感じがぬぐえないのです。なぜかしら、この監督。*1
 でもって、人のいない世界(誰もいないロンドンの街、郊外の緑の続く風景、馬の親子が駆けるシーンなど)が、やたらと美しく見えてしかたない。『ザ・ビーチ』もそうだったけど。
 自己とか他者とか以前に、人間が一番の癌なのか。

*1:例えば、軍が守るエリアを夜中に襲撃する感染者たち。『ザ・ビーチ』で、欧米のノー天気若者たちが築いた“楽園”の隣で、生活のために命がけでご禁制の芥子を栽培する現地の人が、若者を襲うシーンを連想してしまう。限りなくゾンビに近い人間と、非西欧人は同じ扱いにも見える。コミュニケーションが成り立たず(遊びと生活じゃ切迫感が違いすぎるし)、黒く薄汚れて不気味な存在という点において。