アイスブルー

アイスブルー

 青いバラを作ってみたいなぁと、なぜか急に思い立って、自宅で試行錯誤したことがある。子供のころ白いカーネーションに色水を吸わせて、好きな色のカーネーションを作った。同じようにできないかなと。
 絵の具の青、万年筆の青インク、水性ペンの青…身近な材料で、濃度を変えた色水を作って。
 きれいな青いバラにするには、真っ白なバラをベースにするのがいいだろうと、何軒かの花屋を回った。そこで、本当に白いバラは町の花屋では、まず置いてないものだということを初めて知った。
 正確に言うと、普通の人が白いバラと思っているのは、花屋さん、つまりプロはイエローに分類しているものがほとんどらしい。一見、白くても黄色い色素が入ってるんだそうで。
 また、本当に白いバラは意外に寂しげになってしまうので、通常のブーケやアレンジメントには使うことはまずないとも教えてもらった。指定があった場合や、お葬式用には取り寄せるけれど。
 やっと真っ白いのを見つけて試したが、結局、うまくいかなかった。花首の辺りで、色素が詰まってしまうようだった。万年筆の青インクが比較的吸い上げがよかったが、花びらが全体にブルーになるのではなく、葉脈ならぬ花脈?が青く染まるだけだった。静脈が浮き上がったような、変なバラになった。
 …で、このアイスブルー。あるバラ栽培農家が、特殊な青い染料を吸わせて作った青いバラだそうで。よく見ると花だけでなく、葉裏も青い。昔、チャレンジしたこともあって、つい買ってしまった。
 お店の人に「白や、色の薄いお花と一緒に活けないでくださいね」と念を押される。一緒の水に入れておくと、青い染料が溶けてきて移ってしまうから。万年筆の青インクでは一週間かかったものも、プロの染料では1日も必要ないらしい。
 人類憧れの青バラを部屋に飾ってみた。けれども人工的に染められたそれは、青が鮮やか過ぎてるような気がして、なんとなく落ちつきが悪いのだった。
 1本630円也。手間ヒマ、希少価値を考えて高いか、安いか微妙。