純愛コード

 たまたまテレビをつけたら韓国ドラマ『天国の階段』をやっており、予備知識もないまま見る。が、次第に
「これは、何のプレイですか?」
と変な汗をかきそうになってしまった。
 どうやら記憶喪失で、自宅から失踪中のヒロインの記憶がようやく戻り、幼なじみ兼恋人の財閥の御曹司にも、自分の会社で働くよく似た娘が、やっぱりその人だったと気がつく(冬ソナ逆バージョン???)という回のようなのですが。
 で、二人っきりで夜の浜辺を走り回ってお互いの名前を叫びあったり、走り回ったり、暖炉のそばで寄り添って昔の写真を眺めて思い出にふけったり…はいいのですが、そんなの、普通でもあり得ないってほど二人の顔の距離が近すぎ。でも、絶対チューはしない。御曹司が覆いかぶさって、ヒロインが目を閉じても(笑)。
 お互いの絆の象徴?であるらしいペアネックレスを、くっつけて一体化した後、再びお互いの首にかける、という長々としたシーンもありました。それを半逆光で横から撮ってるのですが、実際にはしてないんだけど、チューしてるように見えなくもない仕組みになってる。シルエットで。あのカメラ位置と演技、絶対計算しつくしてると思う(笑)。
 こういう状態というかシーンが延々とねちっこく続く。絶対、何もしないんだけれど、視聴者に何かを想像させようという意図をビシビシ感じてしまって、気恥ずかしくて落ちついてみていられず。
 宝塚劇場で3年前に見た『鳳凰伝』を思い出す。似た記憶として。
 『鳳凰伝』は、プッチーニのオペラ『トゥーランドット』ヅカ版とでも言いましょうか。大まかな設定、ストーリーはほぼ同じです。
 求婚者に難題を吹っかけては解けないと殺してしまう中国の怖いお姫様トゥーランドットが、逆に求婚者の王子に難題をかけられて、それを今夜中に解かないと結婚しなきゃならない、とまぁ、プライドの高いお姫様が心底追い詰められた時、彼女の妄想?に王子が現れて、耳元で
「切ないか〜?」
「辛いか〜?」
「熱いか〜?」
と、囁かれていちいちそれに「切ないっ」「辛いっ」「熱いっ」と反応して延々身悶えするシーン。
 こ、こんなに露骨に官能的な演出、ヅカで大丈夫???と衝撃を受けました。ヅカも清く正しく美しくの世界一辺倒かと思いきや、コードギリギリのところで色々やってるんですね。ピュアな世界であろうとして、結果としてより淫靡でエッチな感じに仕上がってる気が…というか、こういう感想を持つこと自体、心が穢れているってことでしょうね。はは(苦笑)。
 ヅカファンのおば様方(多分、年代的には微笑みの貴公子追っかけの方々と重なる)の表情は、会場を見回したとき、意外にも平然と、というか、無反応でした。本当はどう思ってるんでしょうか。