五線譜のラブレター

公式サイト:http://www.foxjapan.com/movies/delovely/top.html
 コール・ポーターアメリカの有名な作曲家。そんな彼と彼の奥さんとの半生を、彼の代表曲をちりばめながら辿るミュージカル仕立ての映画だった。
 印象に残ったのは2点。
 1つは、音楽の力はスゴイなということ。
 改めて思いました。音楽に詳しくない私でも、音を聞けば「あ!」と分かる。彼の関わった映画やミュージカルを見たことがなくても知っている。CM等、いろんなところで使われているから。そして、ちょっとしか耳にしたことがなくても記憶に残るメロディ。
 そんなスタンダード化した曲を、現在の実力派アーティストたちがそれぞれアレンジして歌う。その歌声の力強いこと!ある人はミュージカルの中で踊りながら、ある人は秘密クラブの怪しい歌い手に扮して、ある人はウェディング・シンガーとしてスウィングしながら…。久々に、音楽を聴いて背中がゾクゾクするような快感がありました。
 もう1つは、キチンとしたファッションは素晴らしいなと。
 確かに、お金持ちの世界だから…といえばそれまでですが、20〜30年代ファッションは、日常においてもエレガント&シンプルで品がいい感じが。装飾過多でもないし。美輪明宏がお手本にしたいと言っている大正時代、及び戦前のファッションにも通じるなぁと。私の毎日ジーンズばかりの生活と違って、潤いがありそうです。(でもジーンズは、毎日ジャブジャブ洗濯できるし、冬も暖かいし、楽チンでいいです。とても。)

 一応、公開前の映画なので、これから観ようかなと考えている方はここまで。


 




 ダークサイドへようこそ(笑)。


 コール・ポーターは、ゲイです。妻となるリンダはそのことを承知の上で、結婚します。単なる好き嫌いではなく、彼の才能に惚れこんで、公私にわたるプロデューサーになろうとしたんじゃないかなぁと思うのです、多分。

 ところが蓋を開けると、筋金入りのゲイ男子が放蕩の果てに、両足を怪我し、そこで女神の如く不滅で献身的な妻の愛に目覚め、男遊びから足を洗って、めでたし…みたいなお話になってました。途中で、完璧に幸せな家庭には子供が必要!みたいなシーンもあったり。そうか、そう来たか。オトコ遊びも芸(ゲイ)の肥やしや!夫婦善哉ですか?
 …という冗談はさておき、こういう人たちには、普通の男女の愛憎では収まりきらないものがあるんじゃないかと思うのですが、温かく見守るパーフェクトないい女と、それに甘えてやりたい放題な男っていう、ありがちな理想図?で納められてしまった感じ。

 我が家にはMGM50周年記念で作られた『ザッツ・エンタテインメント』があります。ザッツ・エンタテインメント コレクターズ・ボックス 〈5枚組〉 [DVD]ドキュメンタリーとして、撮影スタジオの中で行われたMGM所属の役者、スタッフ、社員総出の本当のパーティシーンがあります。『五線譜のラブレター』にも、このパーティシーンがありました。
 『ザッツ…』は、当然ながら、スターが勢揃いして華やかさを全面に打ち出しているのに対し、『五線譜…』の方は2人が上手くいっていないエピソードの一つとして出てきます。あの華やかなパーティの裏側では、こんなことがあったのかも、と思うとちょっと感慨深いものがありました。