ウォー・レクイエム
はっきりとしたストーリーはなく、第一次世界大戦中に亡くなった詩人ウィルフレッド・オーエンの反戦詩と第二次世界大戦を受けて作られた作曲家ベンジャミン・ブリテンの曲「戦争レクイエム」で構成されたヴィジュアル・オペラというものらしい。
デレク・ジャーマンの映画は、押しなべてストーリーを追うというより、イメージをつなげたものが多そう(何本か見ただけで勝手に断定)で、今回も地の底から湧き出てくるような詩の朗読とか、歌声とか、独特の幻想的な映像美とかいったものは、相変わらずスゴイなぁとは思った。
けれども、戦争というテーマで強く訴えかけてくるものは、私にはなかった。
出てくるのは、ほとんど前線の兵士たちと従軍看護婦のみ。それに幻想的な雰囲気がプラスされると、なんというか、イギリス人(アメリカもそうかもしれんが)の考える戦争とは、どこか遠くの異空間で行われているものなのかなと。
若い兵士の「何でこんなところに連れてこられて、こんな風に死んでいくのだろう俺達」的悲惨さは、よく理解できる。でも、それに終始してるようで、他のことが見えてこない。例えば、国土が荒れる(荒らされる)悲しみのようなものはない。
何よりこの10年間くらいで戦争というものが、大きく変わってしまったという気がした。