娼年

娼年 (集英社文庫)
基本設定が似ていると言う理由で、なぜか『正しい恋愛のススメ 1 (YOUNG YOUコミックス)〜(5)』と『娼年』を比べて読む会が職場に出来上がっていて、先にこちらが手元に届いた。
 サラリとした(しずぎた?)透明感のある文章で、話自体がココロに染みる…というほどではなかったけれど。
 女性がお金を払ってでも、男性としたいことが何であるか、について。その一つの形が男性作家の手でキチンと描かれているのが新鮮だった。特に、主人公を買う女達がことごとく、年は取っていても、頭がよく、美しいところ。
 浮世離れしてるといえばそれまで。けれど、若いころからいわゆる普通の恋愛に不自由しなかったであろう魅力あふれる人達だからこそ、ある意味リアリティがある、というかより切実な感じがした。“普通の男達”との恋愛では、それは得られなかったと思うわけです、多分。
 だから、これ、モテたいと真剣に考えている男子は読むといいかもしれない。一見、ごく地味めの大学生だった主人公が、どうしてトップクラスの娼夫になったのか。セックスのテクニックがスゴイ、ということではないです。念のため。
 でも、そのシーンは結構官能的でして、電車の中で「こんなん人前で読んでて大丈夫かぁ??」と心臓に汗をかいてましたが(笑)。小説の中で、いかにもホストな男の子も出てきましたが、彼はクラブの娼夫テスト自体に不合格でした。
 丁度、『娼年』を読むために中断している『毛沢東の私生活〈下〉 (文春文庫)』における毛オジサマは、その地位と権力を遺憾なく使って、できるだけ若くて無垢(無知)な女の子達の肉体と心を支配し、数をこなすセックスに励む、ある意味、非常に分かりやすい男性。*1こっちの小説の主人公と女性客の関係とはかなり違います。
 ところで。
正しい恋愛のススメ』の方は、私の前に借りている女子が感動のあまり何度も読み返しては号泣しているらしい。だから、まだしばらく届きそうにない。
 それと。
 『娼年』のことであれこれ思いをめぐらせていたら、ふと、学生時代の訪問販売のバイト先の所長のことを思い出した。頭の薄い、前歯のないバツイチ中年男。なのに(と、言っていいのかどうか分からないが)、フラリと訪れた先の団地の奥さんとよくデキちゃう人で、事務所で時々不思議な情事の顛末話をしてくれました。
 ひょうひょうとしていて、指先とワイシャツのカフスボタンがキレイだったことを覚えています。
 

*1:一応、念のために記すと、この本は政治・歴史のノンフィクションです。