クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲

映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 [VHS]
テレビシリーズを何回か見たことがある程度の認識しかなかった『クレヨンしんちゃん』。けれども前々からこの映画、オトナに評判だと聞いておりました。私に最初に熱心に薦めてくれたのも39歳・男・バツイチの友人。およそ一般的なファン層と思えない。
けれども『クレヨンしんちゃん』の熱烈なファンのid:ace9th10thさんも、この映画はしんちゃん作品中のエースストライカーだとおっしゃる。それで、とうとう借りてみることに。

やはりスゴいアニメでした。オトナは色々考えさせられると思います。怖いです。その辺り、色々なサイトで指摘がありますが、私もその通りだと思うことしきり。

それにしても。
ありのままの現状を認めてもらえることが、何と心地いいことか。そして、心地よければいいほど、あっさりと飲み込まれてしまう。このアニメの本筋とは違うのですが。
ひろしさん(しんちゃんのお父さん)は、彼の人生の長い回想シーンがあった後、
「俺の人生、つまらなくなんかないぞー!」
と叫びます。多分、ここで世のオトナは泣いてしまうんだと思うのです。私もジーンときて、泣きが入りそうになりました。
秘密結社イエスタディ・ワンスモア(首領はジョンとヨーコ風のケンとチャコですよ!)によって、子供に戻ってしまったひろしさんは自分の臭い靴下のニオイ(これがオトナの現実ってやつ?)で、正気に戻る。
戻った後、つまり輝いていた子供時代を再満喫した後に、チャコに
「現実なんて醜いだけなのに、戻るなんて愚かなこと」
みたいなことを言われ、あのように叫ぶわけです。
ああ、そうだよね、決して取り立てて素晴らしいというわけでもなく、平凡な人生だけどね、それなりにがんばってきたんだし、今の生活もまんざら捨てたもんじゃないよね…って考えるとものすごく心地いい。私自身も。
でも、やっぱり、現実はどうしても醜いところもあるのです。
自分の人生否定する気はないけれど、この話を見ていたら、人生を肯定すること≒現状を受け入れること、または都合の悪いことは見ないでおこう、に微妙に摩り替えてしまいそうに思えてきて。すれてます。ええ、恋愛成績表で精神年齢53歳ですから。(凹み気味)
それはイエスタディ・ワンスモア団が懐かしの世界に閉じこもろうとしたのと、同じではないのかと。*1ヤドカリの宿換えぐらいの違いか。
なんか『渡る世間…』見て
「やっぱ、どこも親戚って揉めるのよね」
『冬の…』見て
「私も試練に耐えなきゃ」
って思うだけで、根本的なとこ見ないで先送りしてると似てなくもないような、そうでないような。*2
でも、普段こういうものに文句つけてるわりに、『クレヨンしんちゃん』のような変化球受けると、私もあっさりとその気になってしまってダメこりゃ、私。

とはいえ、主人公はしんちゃん。彼はやっぱりエラかった。
「オラ、オトナになりたい。なってキレイなおねいさんとお付き合いしたい!」
すばらしい。何のために、何になるのか。凄くシンプルでストレートな回答。…というか、あまりのしんちゃんの子供離れした活躍ぶりに、しんちゃんとは何モノだろうか(何の象徴だろうか)…と思うくらいでした。いや、そんなところを考える話じゃないんですけどね。

*1:映画では、当然、イエスタデイ・ワンスモアのやることに批判的であるにもかかわらず、20世紀博、その他、ケンとチャコの繰り出す世界のノスタルジックさに映画を見てるリアルオトナが感動してるのも、同じことか。

*2:ドラマが悪いって言うんじゃなくて、受け取る側の問題として。