女がいちばん似合う職業

女がいちばん似合う職業 [DVD]
「とても良かったから、絶対に機会があったら見てよね」
その昔、女友達から強く薦められたのだが、いかんせんマイナーな邦画なので手立てのないまま10年以上が過ぎたが、ようやく現在利用しているレンタル店に入荷した。
なぜ彼女がそれほどまでに薦めたのだろうか。
桃井かおりが演じるヒロインは30代半ばの現場の刑事。総監賞も度々もらっているようだから、仕事はできるようだ。
けれども、手配中のヤクザからは
「女のクセにデカやってるなんて死ね」(なぜか同僚の男性刑事は狙われない)
と半殺しの目にあい
ヤクザの母親からは
「女がデカやるなんて、世も末ね」
と吐き捨てられ
上役からは
「さっさと捕まえられなかったら連続妊婦殺人事件の犯人は(妊婦をやっかんだ)お前だと思うことにするからな」
と、結婚も出産もしない女がいつまでも職場に居座っていることに対するイヤミを言われ
同僚にも
「女がいっしょだと経費がかかってしょうがない(張り込み用の部屋も、二部屋取らなきゃならんという意味)」
と愚痴をこぼされ。
まったく、女にとって割りの合わない職業だ。自分という個人とは関係のないところで、叩かれる。
ところが、ヒロインは
「デカなんてさ所詮仕事なんだし、だからいつだって辞めようと思えば辞められるの。でも、女であることは辞められないの」
と、言いつつデカを辞めないし、女も辞めなかった。いや、自分を辞めなかったというべきか。(代償はあったのだけれど。)
友達は
「最後に、突発的に街中で起こったヤクザの抗争に、赤ん坊とショッピング中の桃井かおりが、赤ん坊を置いたまま反射的にバーッと飛び出していって…で、戻ってきて何事もなかったみたいに『はーい、泣かないの、泣かないの』って言いながら、赤ん坊をやさしく抱っこじゃなくて、無造作に掴んで担ぐのね。そこがとてもかっこいいと思った」
と言っていた。
当時としては(今も?)珍しい女のハードボイルド物語だった。とはいえ、かなりむちゃくちゃなストーリーではある。いくらなんでも、文字通り「カラダをはった捜査」では、警察も困ると思う。むしろ、それでも同志として接し続けてくれる男性の同僚がいるなんて、メチャクチャ恵まれている。また、犯人とヒロインがどーしてああなってこうなるのか、分かるような分からないような、イマイチ弱いところもある。
でも、サスペンスとしての部分は置いといて、女一匹で渡世する色んな意味での生き難さを桃井かおりというキャラを通して読み取れれば、この映画はいいのかなと。
昼間、クールにふてぶてしく振舞っていても、夜中に1人、声も出さすにただハラハラと涙を流すカットは、何で泣いてるのか?とストーリー上の理由は分からなくても、気持ちは分かるような気がするのです。
あのころ、友達は働くことに悩んでいて、そして結局、今は実家のある九州に戻って高校の先生をしている。彼女は私にこんな映画を強く薦めていたことを覚えているだろうか。もう年賀状のやり取りくらいしかなくなってしまったけれど、今、私達はこの映画の桃井かおりくらいの年齢になってしまったのだ。