セイヨウニワトコのクレープ、空軍育ちのイノシシ
デンマーク王室の料理長として長年活躍されているという近藤卓という方を、偶然、チャンネルを合わせたNKHの番組で知った。
王室の豪華な、一方で意外に実質的、質素な生活*1ぶりをはじめ、彼が女王をはじめ、デンマーク人スタッフから本当に信頼を得ているんだなということが伝わってきて、久々にテレビでいいものを見たなぁ、よかったなぁという気分になった。最近、テレビをあまり見なくなったせいもあって。
その番組の中で、食べてみたいと興味を持ったのが「セイヨウニワトコのクレープ」。女王様のお気に入りで、夏には必ず出すメニューなんだとか。
その作り方が実にワイルド。近藤氏の自宅からお城へ向かう間は車で30分。その途中の道路の脇に自生しているセイヨウニワトコの木から、彼がはさみでチョンチョンと白い花を切る。そして、厨房に着くと水で洗うこともなくそのままフライパンへどんどん放り込んでしまう。
NHKのクルーが、彼がフライパンを振るうそばで、恐る恐る
「洗わないんですか?蜘蛛とか入ってませんか?」
と質問しても
「洗うと味がダメになるんです。蜘蛛くらい入ってても構わないんです。蜘蛛がいるってことは美味しいってことで、その方がいいでしょ」
と笑っていた。
もっとも、はさみで切る時点で虫や汚れのないものを吟味してるとは思う。けれども今、これだけ世界中が(またはアメリカが)テロだなんだと騒いでいる中、へんぴな田舎道とはいえ、道端の花を洗わずに食べているデンマークの女王様というのも、不思議な気もする。
少し苦味があるらしいけれど、どんな味か食べてみたいなと思ってしまった。白い花のクレープ。蜘蛛は抜きで。
【参考】セイヨウニワトコ http://www.atelier-zen.com/EX_SambucusNigra.htm
その番組の最後は、陛下(女王の夫)の誕生日の祝賀晩餐会の様子を捉えていた。この晩餐会のメイン料理はイノシシの丸焼き。材料のイノシシは、空軍産である。デンマーク空軍のシンボルがイノシシであることから、空軍基地内で常時イノシシを飼っているそう。営利目的ではないので、緑に囲まれた広々としたスペースでノンビリと育てられられている様子で、かわいらしいウリ坊も沢山いました。
で、こうやって時々、王室のお祝い事などに名誉なこととして使われているんだなと思うと、なんともいえないヨーロッパの懐の深さを感じてしまいました。自衛隊とは随分違うなと。そもそも成り立ちが違うので、比べること自体が間違っているとは分かっているんですが。
*1:1Kgの銀の皿も100年使い続けていると100gぐらい減るとか。