野口里佳展 飛ぶ夢を見た/原美術館

 彼女のことは直接は知らない(>当たり前)なのだけれど、こんなことがあった。
 写真ワークショップの講師の人が言った。
「女性写真家って言うのはさ、女としての生き様とか、女性特有なものをウリにしてる人が多くてそれやると簡単に世間に受けるからさ、ずるいよね。野口嬢も実は結構、大変な生い立ちというか人生があるみたいなんだけど、それをおくびにも出さず、作品のウリにしないところがプロだよね」
 …なんだか、女性特有なものをウリにしているという(誰のことをさしているのか知りませんが)女性写真家の方々だけでなく、彼女に対しても失礼な言い方だなと。単に自分の好き・嫌いの話を、作家として質が高い・低いの評価軸の話にすりかえているように思えて。何をテーマにしようと、ダメな人はダメだし、いい人はいいわけで。
 というか「女性特有なものをウリ」*1にしたような1人の生徒の作品をベタホメした直後の居酒屋で、全く逆のこと言うか?本人が別のテーブルにいて聞こえないからといってさ。
 けれども彼に感謝したいのは、あの発言のお陰で野口里佳さんの作品のよさを自分の中で自覚できたこと。そうか、色んなシガラミというか、重力から解き放たれた感じがいいなと思っていたんだな、と。
 今回の展示もクールな開放感のあるものが多かったのだけれど…前から知っている人にとっては新作がほとんどない上、展示総数もこれまでの原美術館の企画展と比べて少なく、これで¥1,000は正直ツライものが。
 ただ、原美術館のそれぞれの展示空間に最適になるよう丁寧に作品サイズを決めている風には思えたので、仕方がないのかも…と無理やり納得。形式が決められた写真集から伝わりにくい、こういう風にみて欲しいんだという作家の意図は、展示の方が分かるような気がする。

*1:彼の定義に当てはまるという意味において。