A、A2
マイケル・ムーアもいいですが、こっちもかなりいいです。テレビで見られないものが見られるという意味において。ただマイケル・ムーアと違って、面白おかしく分かりやすくするための編集がほどんどない分、見る側に自身の判断を求められるので、より重いです。いや、他人の庭じゃなくて、自分の庭の話だからか。笑えるシーン自体は結構あるんですけどね。
サリン事件以降も残ったオウム真理教の「普通の信者」たちを巡るドキュメンタリー。『A』は荒木副広報部長(当時)を中心とした教団の内部。『A2』はアレフ改称以降、教団と教団を巡る他者との関わりが中心。
衝撃的な??見どころの一部。
- 手を出したのは公安警官の方だが、無理やり信者が連行されるシーン。
(公安の人の膝を抱えて痛がる大根演技を、笑って見ていいものかどうか…)
- 自治体が用意したものではなく住民ボランティアが立てた監視用テントを、住民ボランティア自身と信者が和気あいあいと解体するシーン。
(監視される側と監視する側が、本当に仲良くなってる。記念撮影したり、本!を交換したり。そしてお互いにこういうところは、テレビで放映されないことも知っている。すぐそばに、各局の中継車がいるのだけれど。)
- マスコミ同行のもと、松本サリン事件の被害者河野さん宅に教団幹部が訪問するシーン
(TVカメラが止まっている間のやり取りで、改めて河野さんに頭が下がる。対して教団がダメな理由も良く分かった。)
- 教団側から見たマスコミ、住民の反対運動ぶり。
(心情的にという意味ではなく、単にカメラ位置が教団側にあるというだけのことだけで、こんなに見える絵が違うという事実。)
- 横浜の右翼団体が、オウムについて静かに語るシーン。
(従来イメージどおりの?典型的な団体も出てくるのだけれど、こういう人もいるんだなと。)
私はコレを見ても「オウムの人って可愛そう」とは少しも思わないのですが、彼らを取り巻く社会も、ある意味彼らと同じくらいヘンな気がしてきます。もちろんその「ヘンな社会」の一員として私もいるのですが。オウムを通して、こちら側のことを考えさせられる映画でした。うーむ…。
追記:
荒木広報部長ってなんとなく上の弟に顔立ちや仕草が似てるなぁと映画を観て初めて認識。(弟と私は似てない。)テレビじゃそんな風に思わなかったんだけど。
そこで一言。
とっても真面目で誠実な人柄というのは分かった。それと忍耐強い。
でもさ、修行の道を進みたいって、それ、1人でやるなら構わないんだけど、どーして集団で、というかグルに頼ろうとするかなー?修行って本来、とても孤独なものだと思うわけで。それも、自分の魂の救済だけが究極目的で、ピュアといえばピュアなんだけど、とてもエゴイスティックなんだよね。そのエゴイスティックさに、全く無自覚なのがとても気になる。それは荒木君だけに限らず、信者の人全員に共通してるように見える。
芸術家とか、宗教家と呼ばれる人たちは、時になりふり構わず自分の道に突き進もうとするのだけれど、自分のしていることがどれだけエゴイスティックなことか、という自覚はあると思う。それでも突き進まずにはいられないんだ!という衝動が大事なんだし。もう、俗世には興味関心がないのは分かるんだけどね。
せめて女の子と一度くらいキスしたりエッチしてから教団に入った方がよかったかもしれないね。