シティ・オブ・ゴッド

 シティ・オブ・ゴッド DTSスペシャルエディション (初回限定2枚組) [DVD]
 想像していたのと違っていて、案外、普通に観ることができてよかった、よかった。子供達が笑いながらバンバン銃を打ち鳴らし、人を殺す話だと聞いていたので、子供の得体の知れない残虐性に触れて恐ろしくて正視できないと思っていたのだが。
 NHKクローズアップ現代?で前に、日本女子大の調査*1において「人は死んだら生き返らない」と正しく答えられた小中学生は3割と報告していた。
 映画のブラジルの子供達はとても“不幸な循環”に置かれている。だからこそ、あのお子様ギャング達がああなってしまうのは、かろうじて私の理解できる範囲である。理由が分かるから。 もし、調査通りに受け止めるとするなら、日本の残り7割の子供の方が怖いような気がする。そうか。私が恐ろしいのは、訳が分からないことなのか。
 いずれにせよ、両者とも自分とは間接的なつながりしかないという前提での話。直接的だったら、やっぱり銃口向けてくる方が怖い。はは。(苦笑)
 ところで。
 冒頭の、目の前で次々と仲間が“処理”されていく様を見つめている鶏が、足の紐を解いて逃げ出すシーン。*2生きるってこういうことじゃないか、と思う。生きるために他の動物の命を奪う。それが理不尽なら戦う、または精一杯そこから逃げる。命を奪ってるのはこちらも同じ。鶏が美味しい!と感じるのはそういうことだ。そして、あたふたと走り回ってる鶏の姿も他人事ではない。
 それにしても。
 映画に出ている子供達のことをうかつに「いい演技している」「いい表情をしている」「生き生きしている」と言っていいものかどうか、私はためらってしまう。悲惨さの上に咲く、美しいあだ花のようなものでもあり、それをデジタル処理を施したスタイリッシュな映像で、クーラーの効いた部屋の中で観るということ。相当、間接的だけれども、これを観てる自分はあの子たちを搾取してる側なんだな。哀しいかな。
 なお、ずーっと観てみたかったのだけれど、スプラッタシーンがダメなんで、コレもダメだろうと放置していたのですが、id:chimadcさんのお陰で決心つきました。多謝。

*1:また、小学4〜6年生を対象にした筑波大の調査では、男の子10%、女の子14%(数値は大雑把。うろ覚え)が「よく眠れない」などの抑うつ傾向にあるとの発表もある。同じような調査が、ヨーロッパでは1〜4%ということを考えると突出しているのが分かる。日本の子供達は、生活環境は恵まれているはずなのだけれど、あまり幸せそうではないということか。

*2:映像的にもかなり美しくて、ちょっと感動的。