西本智実「革命」ツアー2004 with アナスタシア/横浜みなとみらいホール

 西本さんってどんな人だろうか?それを確認するために行ったコンサートであった。西本さんは世界でも1パーセントもいないという女性の指揮者でボリショイ交響楽団ミレニウムの首席指揮者、ロシア交響楽団 芸術監督・首席指揮者でもある。ただし、今回の公演はバイオリンソリスト、アナスタシア嬢と第一バイオリニストはロシア人だが、他は東京交響楽団のよう。
 詳細はこちら 西本智実公式HP内プロフィール:http://www.tomo-nishimoto.com/article/profile.htm

 彼女が指揮をする後姿は、あまりに凛々しかった。まるで天海祐希。ブラックのマオカラーでスソの長い燕尾服(でも、ウエストが絞り気味のあたりが男性のものとは少しシルエットが違う)、まっすぐに伸びた背筋、キビキビとした美しい手の動き、宝塚に出てくる王子様のよう。決してわざとらしくはないのですが。
 これは絶対、女性に受けるよなぁと思って改めて会場を見渡すと、通常のクラシックコンサートとは明らかに違う客層。とにかく中高年を中心に女性、女性、女性。
そしてスポンサーは全面的にSK-Ⅱ。フロアには桃井かおりのポスターがあちこちに設置され、パンフレットを買うと抽選でSK-Ⅱの何かが貰えるなどというアナウンスが流れ、そしてそのパンフレット¥2000(私は買わなかったが、買った人のを横から覗き見した限り)は、通常のものとは明らかに作りが違う様子。西本さんと美人バイオリニストのアナスタシア嬢にフィーチャーしたカラービジュアル中心のアンアン、もしくはクロワッサンの記事のようなのだ。そして何気に「SK-Ⅱを使うと調子がいいの」みたいなキャッチーなコメント。あわわわ…。
 また、クラシック音楽が好きというよりも「西本さんラブ!」もしくはマックスファクターから招待券もらっちゃいましたというノリの方々が多いのだろうか。まぁ、私も西本さんを見るためにきたんで、同じといえば同じだが、それにしても、演奏中の咳があちこちから激しく響き渡ることこの上なし。口元を押さえるといった気遣いも全くなし。または寝てしまって、それまで手で押さえていた入り口で配られた宣伝チラシを膝から「ドザザザーッ」と落とす音とか、バッグの中をかき回すカサカサ音などもあちこちから常にこだまし、極めつけはバイオリンソロ中(つまりかなり静かな中)に、お財布から小銭が散らばる音!!!
「ジャリジャリ、チャリーン、チャリーン、チャリチャリチャリチャリ、リリリリーン…」
 …最悪。
 また皆さんとても拍手好きというか、楽団員がただ入場するだけで拍手、一楽章が終わればとにかく拍手拍手。指揮するのもやりにくいんじゃないだろうかと余計な心配。
 肝心の演奏の方は、クラシック好きの夫によると、バイオリンソロの入らないショスタコーヴィッチの交響曲第5番「革命」とヴェルディの歌劇「運命の力」序曲は、よかったらしい。彼女の指揮はタイトにまとまっているのだが、チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲 ニ短調」はソリストがマイペースでゆったりと演奏しようとしていて、かみ合っていなかったそうで。私はそこまでは分からなかったけれど。
 それとちょっと気になったのは、指揮の激しさ男らしさ?とうってかわって、演奏が終わってしまうと恐ろしく控えめになってしまうこと。挨拶もバイオリンの後ろに隠れるように立ってて、決して中央に出てこようとはせず、他のメンバーに気を使いまくり。特にアナスタシア嬢に対しては、何をこんなに気を使うのだろうかというほど。「この公演はアンタが主役でしょ!もっと図々しくていいのよ」と言いたい。いや、謙虚なお人柄なのでしょうか。
 先にSK-Ⅱとのタイアップを揶揄するようなことを書いたけれど、本当は今も資金集めで苦労してるのかなと思ってみたり。実はボリショイの首席指揮者の話も、行ってみたら資金不足で解散寸前状態。 それで自らも2年間資金提供先を探して交渉の日々を送り、その甲斐があってボリショイ交響楽団は無事国が管理してくれることになったという経緯があるらしい。
 若くてしかも女性指揮者という特殊な立場で、更に指揮者なのに楽団の資金集めまでと苦労なさってる様子。今回の公演のチケットはどこも完売のようで人気があるのはいいけれど……。(他の会場は違うかもしれぬが)
 心の中で「がんばれ!」とエールを贈るのであった。