デブラ・ウィンガーを探して
監督のロザンナ・アークエットが、いい意味で普通の人っぽい。明るくチャーミング、だからといって、アメリカ人にありがちな過剰なアグレッシブさはない。人の話もちゃんと聞ける。この映画の取材のためにカンヌ映画祭にやってきたのに妹、パトリシアのことばかり彼女に質問する記者達ってホントに失礼だなぁと思ったが、ちゃんと応えてて偉い。(最後に一瞬見せる微妙な表情がせつないけど。)ホリー・ハンターにインタビューしたときも、向こうから「『ピアノ・レッスン』がヒットしたとき、有名女優で『感動しました』と感想の手紙をくれたのはあなた1人だけだったから、よく覚えてるわ」と言われてたことからも、彼女は本当にいい人なんではないかと思う。
そんなロザンナさんは「仕事と家庭の両立」について同世代の女優達がどう向き合っているのか知りたい!とインタビューの旅に出かけるのだが、「(家庭生活を持ちつつ)若さを重視するハリウッドにおいて女優生命をどう延命するか」みたいな事の方がみんなしゃべりたがったりで、取りとめがない。というか、「仕事と家庭の両立」なんてことで悩んでるのはロザンナさんを含め、どちらかというと元々環境的に恵まれてそうな二世女優ばかりのような。
製作幹部のセクハラ話に女優陣は大いに盛り上がっていたが、本気で改善したいならマイケル・ムーアがチャールトン・ヘストン邸に乗り込んでいったように、映画会社に行って取材すべきところ。でも彼女にはその気はない。特典映像中のロザンナさんインタビューで、ハリウッド批判に関する質問には、ものすごく慎重に言葉を選んでいることからも明らか。
じゃ、彼女が本当は何をしたかったかを考えてみると、仕事と家庭云々というテーマよりも、普通に自分と同じような立場の女優とただ本音のおしゃべりをしたかっただけじゃなかろうかと。ハリウッド女優は、想像以上に横のつながりがなく孤独なのか。目的のデブラ・ウィンガーの自宅庭での対談や、ジェーン・フォンダ御大へのインタビューは、ある意味、寂庵での瀬戸内寂聴とNHK黒田あゆみアナウンサーのようにも見えた。大先輩への人生相談。