ロスト・イン・ラ・マンチャ
♪よーく考えよ〜、お金は大事だよ〜♪矢田亜希子の歌うアフラックのCMソングがなぜか頭に浮かぶ映画。
テリー・ギリアムが予算50億円で映画「ドン・キホーテ」をクランク・インしたものの、たった6日で頓挫。そのスタートから完全に頓挫するまでのDVD特典映像風ドキュメンタリーなのだが、よくもまぁ、次から次へとハプニングやら問題やら起こる、起こる。ここがハリウッドではなく、ヨーロッパならではの管理のゆるさが原因のような気がしないでもない。でも、結局これらの問題は「お金」さえあれば解決できることのように思える。突然の大雨に泥沼化した荒野で機材が流されたり(ものすごい迫力で笑ってしまうくらい)、主演男優が椎間板ヘルニアで倒れてしまって撮影できなくなるのも、結局、お金が充分にあればスケジュールの延期ということで解決可能なのだから。
映画監督ってもっと、撮影に専念できるものだとばかり思っていたけれど、こんなに色んなことにか関わらなきゃならんとは。雑事の方に圧倒的に時間を割かれている。映画制作とは芸術じゃなくて、ビジネスなんだなということがこれを見るとよく分かる。シビアなプロデューサー、完成保証人(初めて知った職業)、出資者の皆様。日がたつにつれ、どんどん関係者の皆さんの顔が険しくなって、監督も追い詰められていく様を見ているとこっちまで胃が痛くなってくるような。サラリーマンでもプロジェクト・リーダーなんかをやったことのある人は、身につまされるんじゃなかろうか。
撮影が頓挫して、この映画の脚本その他の権利は全て保険会社の物になっているのだそう。撮影の延期も理由が天災か、不可抗力の事故かで保険金が降りるかどうか変わってくるそうで。やっぱり♪よーく考えよ〜♪保険会社の歌が頭の中でぐるぐると…。
で、ギリアム監督はあきらめず保険会社から脚本を買い戻そうとがんばっているらしい。このドキュメンタリーを見る限り、凄く面白い映画になる予感がするので、是非がんばってもらいたいなと。となると、この映画は再チャレンジのためのプロモーションビデオ兼、資金集め手段ってことなのか。
それにしてもジョニー・デップの素顔って、尖がってるイメージと違って、あの悪条件の撮影中であっても謙虚で忍耐強くて、その上、相当に頭のいい人でした。即興で監督に自分独自の演技アイディアを披露したり。さすが。