奈良原一高 時空の鏡:シンクロニシティ展/東京都写真美術館

 昨年、PGIというフォトギャラリーでこの方の個展を見る機会がありました。何の予備知識もなくそのコンピュータを駆使した作品群を見て、不遜にも「ありがちでつまらない」と思い、それっきり忘れていました。
 昨日、写真美術館に行って初めてその「つまらない」と思った人の回顧展であることに気がついた次第です。知らないということは恐ろしいことだなと。
 この方は、ものすごく沢山の引き出しのある人でした。あまりに沢山ありすぎて、いちいちコメントする気になれないほどです。CGはその引き出しの一つに過ぎないのでした。
 若いころの作品でも古さを全く感じさせない、妙に圧縮されたような不思議な遠近感がある、空の雲の形が不自然なほどくっきりと印象的に写っている、スナップ写真においてもいい意味で作り物っぽい感じがあるというのが特徴なのでしょうか。
 特に昔の東京のスナップ、アメリカを撮ったシリーズ、ベネチアのカーニバル時のカフェ・フローレンスの中の様子を撮ったもの、自分のレントゲン写真と花をフォトグラムでつないだシリーズ、ファッションフォトシリーズが印象的でした。
 また、インクジェットを使ったプリントもかなり点数がありましたが、かなり精度が上がったとはいえ、インクジェットプリントはすぐに分かります。でも、だから悪いというのではなく、新しいツールとして、むしろインクジェットならではの質感、浅い色の感じを生かしてこういうアートっぽい作品も作る時代が来ているのだなという気がしました。
 内容といいボリュームといい、かなり面白い展示だと思いますが、ただ一つ文句を言いたいのは、この写真展のカタログに相当する写真集が一冊12,600円もすること。
(奈良原一高写真集 時空の鏡奈良原一高写真集 時空の鏡
 せめて5,000円以下のを作って欲しかった。さすがにふらっと写真展に行って、その足で1万を超えるものをついでに買う勇気がない…。
 東京写真美術館:http://www.syabi.com/
 ドキュメンタリー…の方は6/ 3(木)まで
 奈良原一高展の方は   7/11(日)まで