ソウル見聞録②

●男性が汗蒸幕(ハンジュンマク)を楽しむ方法
 片言の韓国語でも何でもいいから、とにかく会話すること、らしい。(夫情報による)男性客は奥さんやら彼女のお付き合いで仕方なく?来る人ばかりで、絶対的な客の数が少なくガラガラ。しかも、女子は基本コースだけでなく、ついついオプションのヨモギ蒸しやら、ネイルケアやら何やらを追加するので、オプション自体の数が少ない男性の方は、客もアカスリ三助氏もマッサージ師もヒマを持て余し気味で、ややサムい空気が流れているらしい。
 そこで、ヘタな韓国語でも話をして愛想よくしたところ、三助氏もマッサージ師も皆、面白がって、通り一遍のサービスだけでなく、夫のリクエストに合わせて色々なところをノリノリで時間いっぱい(と言うより女の私の方が彼が終わって出てくるのを待たされたぐらい)丁寧にやってもらえ、最高に気持ちがよかったと大はしゃぎ。
 かたや女子の方は女性だけのグループ来る人が多く、中は人でいっぱいなので、流れ作業のように粛々と次の工程へと進まされる。湯煙立ち上るアカスリ台にずらりと女子が横たわった様は、まるで裸体工場。それはそれで壮観な眺めではあったが、なんだか夫の方がはるかに充実していたようで、悔しい。

●風水スポット

左手の山が三角山で、中央のが李氏朝鮮以来の王宮、景福宮内の勤政殿(王が政事を行うところ)の前に建つ興礼門。北からの強力な龍脈がここと更に光化門(正門)を通って市内に流れていくよう、風水に基づいて設計された都市がソウルだという。風水上の効果はともかく、山々をバックに配置された王宮はとてもバランスがとれて美しく、見晴らしもよく、人々が特別な思いをこの宮殿に抱いたであろうことは想像できる。右手の光化門との間の広場には、95年までは朝鮮総督府が建っていたと思われる。全く跡形もないが。
 荒俣宏の「風水先生」風水先生 地相占術の驚異 (荒俣宏コレクション) (集英社文庫)によると、、かの建物は単に龍脈を断つ位置に建っているだけでなく、相当に風水を研究した上で、朝鮮の発展の妨げになるように絶妙に計算した設計になっているらしい。真偽のほどはともかく、そいういう目で見ると、今となってはただの広場も穏やかならざる場所に見えてしまう。

●ぎょうざ鍋
 夕食を仁寺洞の「宮」という名のぎょうざ専門店でいただく。ここはガイドブックによると開城(=北朝鮮の都市)出身のおばあさんの味を守っているところらしい。「焼き」とか「水」とか「蒸し」もなく、ただ「鍋」があるのみ。包み方は日本のようなヒダを取って半円形ではなく、長く取った両サイドをクルクルと巻き込んで閉じている。そして、一つがとても大きい。けれども、皮自体の味や薄さは日本のものとほぼ同じと言っていい。中の肉あんも日本のものと変わらない。メディアを通して「悪の権化」のように言われる北の国をちょっとだけ身近に感じてしまった。そんなぎょうざが長ネギ、にんじん、生の唐辛子、えのきなどと一緒に入っている。

 の部分は、エリンギである。エリンギは美味しいのだけれど、こんなところでもお目にかかれるほど、こっちでもポピュラーなキノコになっていることに驚く。イタリアモノだったのに。*1
 私たちの席は、オンドル形式の床。隣では同級生の集まりのようなオジサンたちの宴会が繰り広げられていた。焼酎ですっかりいい気分になったソウルのオジサンたちは陽気によくしゃべる。突然、演説を始めたり。何を言ってるのかは分からないのだけれど、見ているだけで面白い。

*1:次の日に食べた韓定食=宮廷料理でも、エリンギが出て更にビックリ