イメージをめぐる冒険 AND?それともVS?/横浜美術館

 とても好感が持てました。美術館からのメッセージに述べられている通りだと思う。第一に、(現代)美術を楽しむとはどういうことなのか、という根本的というか、子供や初心者が持つ問いかけに対し、こんな風に比較してみたり、イメージを膨らませて、作品と遊んでみるのも手じゃないでしょうか、と誠実に一つの提案してくれているように思えること。(でも、慣れ親しんでいる人には物足りないのか?)作品群を5つのワールドに分類したその切り口も面白い(100%合ってるのかどうかは別として)が、それぞれのワールドの目玉になる作品には、解釈の押し付けにならない程度の鑑賞の手助けになるような説明がちゃんとなされている。第二に、展示のほとんどが収蔵品であること、すなわち、この20年間の収集活動の報告を市民にちゃんとしてくれていること(だって横浜市民の財産なのだから)、第三として、その収集内容が海外の有名作家に偏るのではなく、日本の、しかもそれほど有名ではない若手にまで及んでいて、バランスがいいというか、まじめに仕事してるんだなと思わせてくれることだ。若手も六本木クロッシングにあったような、子供っぽい、受け狙いか?と思うようなあざとい作風の作品がないのもいい。
 以前、このような記事を見て残念に思ったが、このような取り組みを美術館がもっとすれば、皆が親しめるようになっていくのかも。
 Yニュース 直接鑑賞は50%割れ目前 文化芸術に関心薄まり:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040124-00000118-kyodo-ent
 映像作品の山崎博「ヘリオグラフィー」(実写なのにスケールが大きい!地球規模)、伊藤高志「SPACY」(普通の体育館がこんなにエキサイティングな撮影場所になるとは!)、宮崎淳「A LITTLE PLANET」(郊外の風景が、鏡のようなボール一つで新鮮に見える)がよかった。松樹路人「点在する絵の風景」は、まさに横浜美術館とその周囲の風景も、こんなにシュールに捉えることもできるのか、と発見。
 柳幸典「ヒノマル」は、シャチハタ印(かどうかは分からないが)の集合体で、ヒノマルというのがとても意味深。宮島達男のは、浮遊する数字もいいけど、作品に映し出された自分の影が、髪の毛一本一本までくっきりと、どんな強い夏の日差しで出来る影よりもはっきりとしていて、それが不思議で。(また、作者の意図とはズレているのか?)
 森村泰昌(「神とのたわむれ」4枚組)は相変わらず濃い世界でお腹いっぱい。(いい意味で)藤田修のダークなフォトエッチングも、不思議な世界。寡黙のような饒舌のような。