攻殻機動隊

 少し前にテレビ東京の「ガイアの夜明け」だったと思うが、実質「攻殻機動隊」の続編になる新作「イノセンス」について、ジブリ出身の鈴木プロデューサーに焦点を当てたドキュメントをしていた。そこで少々意外だったのは鈴木プロデューサーというが、かなり現実的というか、相当なマーケティング指向な人であることだった。アニメ製作現場一筋という経歴から、もっと職人みたいな人を勝手に想像していたのだが。タイトルを「攻殻機動隊2」ではなく「イノセンス」にしたのも、「一体この日本で何人の人が前作を見たというのか?“2”にしたら、前作を見た人間から何割呼び込めるか、という話になってしまう。若いカップルがデートで見る選択肢の一つになるようなもっとエンタテインメントとして成功させるには、前作を知らない人が足を運ぶものにしなければならない」というようなことを、若いけれども従来指向のややオタクがかったスタッフに熱く語っていた。
 それでというわけでなく、本当に前から一度は見ようと思っていたのだが。

 取り扱っているテーマ自体は面白いとは思う。でも、何かが違う。何が?多分、最大の原因は、登場する女性の取り扱われ方かなぁと。

 この世界では肉体の機械化の普及度合いは、男も女も変わらないらしい。けれども、機械化した肉体を露にするシーンは、女だけだ。*1しかも、表出しているのは能力拡大の方向ばかり。女にも肉体改造願望がないわけではない。しかし、力持ちになりたいとか、コンピュータ並に情報処理能力を高めたいとかではなくて、「キレイになりたい」のだ。ただそれだけ。あんな首筋のプラグ差込口や、キーボードをたたく3またに分かれた指先なんて、キレイとは逆方向の改造である。更に、手足がもげたり、脳をぱっくり開けられたり、全裸のメンテナンスシーンなどなど、全て女(の義体)ばかり。『趣都の誕生』ではないが、オタクの趣味に一方的に染め上げられた若い女の肉体ばかりが繰り返し出てきて、フツウの女としては生理的にイヤーな気分にさせられるのである。
 描こうとしてるテーマは男女の別に関わらないものなんだけど、なんかこう、偏った表現のオンパレードだと、テーマそのものを、疑いたくなる感じ。

 番組の話に戻ると、鈴木プロデューサーは広告宣伝の方針を打ち出すのに一旦行き詰まる。そこで仕事とは無関係の女性に絵コンテ(台本だったか?)を見せた感想「せつない話ですね」に大いにインスパイアされて「これは人間のドラマだ」とやっと方針が固まる。うーん。人間のドラマじゃなかったら、一体何を描いていたつもりだったのか?

*1:例外は一箇所、一瞬だけあるが